「「横審の魔女」と呼ばれて」(はてな年間100冊読書クラブ 40/100)

「横審の魔女」と呼ばれて

「横審の魔女」と呼ばれて

  • 朝青龍とのバトルで著名な著者が、横審委員の活動を振り返って

横綱審議委員会委員として、
朝青龍とバトルを繰り広げて話題になった(笑)
内舘牧子さんが、横審委員の活動を振り返った内容ですね。
現役委員時代に、雑誌に連載していた原稿に、
退任後のインタビューの内容を追加した構成になっています。
雑誌連載分は、ほぼ10年前の内容もあるため、
古臭く感じてしまうこともありますけど、
新収録のインタビュー部分は、
なかなか面白い内容に仕上がっていると思います。
著者の委員退任直後に、朝青龍が暴行問題で引退しました。
相撲界では、その後も、野球賭博八百長問題が
相次いで発覚して問題になっていますが、
著者は、「外部の視点」から、
相撲界の「甘い体質」を指摘したりしていますね。

  • 異常とも思える相撲に対する愛情、委員の任務も全力で

朝青龍とのバトルの模様から、
著者は「女性らしい、非常に感情的な人なのかな?」
と思っていましたけど、この本を読んで
むしろ、「異常なる相撲マニア」という印象を受けました(笑)
相撲部の監督を引き受けたり、
横綱審議委員会の任務を何よりも優先して、
本業の脚本業を休業したりするなど、
著者の、相撲に対する愛情が伝わってきますね。
委員就任後、「横綱審議委員は、親方や力士に舐められている」
と感じたことから、相撲に対する研究を深め、
相撲に関する知識では、遂には親方などの関係者を
凌駕するほどになっています。
そして、相撲の歴史に対する理解を深めて、
土俵上の「女人禁制」の慣習を尊重して、
太田房江・元大阪府知事の「土俵に上げろ」という言動に
反対するなどしていますね。相撲に対する愛情を持ち、
ただの感情的な女性ではないところが、伝わってきました。

  • 朝青龍は、「頭は良いけど小心者」と見抜く

そんな著者だからこそ、
後に大麻事件で解雇された若ノ鵬の相撲に対する姿勢を、
事件発覚前に既に指摘して批判するなど、
外部識者ながらも、鋭い眼力も示していたりしますね。
また、貴乃花の相撲に対する姿勢を称え、
そして、朝青龍については当然ながら(笑)
厳しい言葉が並んでいます。
ただ、上記のような著者の相撲に対する姿勢を知ると、
ただの感情に任せた言葉ではないことが
よく理解出来ました。著者は朝青龍のことを
「頭は良いけど小心者」と見抜いていたようですね。
朝青龍といえば、問題を起こした後の、
高砂親方の「言い訳の言葉」が面白かったですね…(笑)
著者と高砂親方のやり取りは、漫才のような感じです。
高砂親方が、朝青龍を全く指導出来ていなかったことが
よく理解出来ました…(笑)
まぁ、もともと奔放な朝青龍のことですから、
「そんな高砂部屋でなければ、
朝青龍横綱にはなれなかった」、
とも結論づけていましたね。「敵は敵を知る」
朝青龍の天敵であった著者ならではの言葉、
という感じがしました…(笑)