「「世界遺産」の真実 過剰な期待、大いなる誤解」(はてな年間100冊読書クラブ 32/100)

本書は主に、「世界遺産」の登録事情を解説した本ですね。
世界遺産」は、その登録の基準が「普遍的な価値」という
明確では無い、あいまいなものであるだけに、
登録を目指して様々なロビー活動が繰り広げられている、
という感じですね。ただ、登録までには
何年もの時間がかかり、調査も念入りに行われているようですね。
「異文化の壁」に配慮して、調査には
同じ大陸の関係者が来るようになっていたりもするそうです。
(例えば、アジアの候補には、アジアの関係者が調査に来る)
この「世界遺産」、必ずしも歴史があるものだけではなく、
シドニーのオペラハウスや、ブラジルの首都ブラジリアのように
完成してからあまり時間が経っていない「遺産」もあるようです。

  • 世界遺産は、その歴史を頭に入れてから訪ねるべき

日本でも、「平泉」の「落選」と、
石見銀山」の逆転登録が話題になりましたが、
世界遺産に登録された「石見銀山」は観光客が殺到し
一方落選した「平泉」では、
地元関係者は落胆が隠し切れないようです。
以前平泉に行った時に、「世界遺産の登録を目指して、
対象区域の道路沿いの街並みを、
時代が感じられるようにする」といった
「細工」の様子を、バスガイドさんが説明していたことを
思い出したりもしました…(^^;)
もっとも、世界各地では、「落選」したり、
または数度の見送りを経て登録された、といった例は
沢山あるようですね。「平泉」も諦めずに
次のチャンスを目指せば良い、という感じですね。
もっとも、延期勧告にそのまま従うと、
世界遺産の対象から外れる地区も出てきてしまい、
今までの整備が無駄に終わってしまう、
といったこともあるそうですが…(^^;)
また、地方公共団体が登録の旗振りを
積極的に進めると、まぁ当然ながら、
税金が使われたりもしてしまいます…

  • 歴史的な背景を頭に入れて、世界遺産を訪れるべき

もっとも「石見銀山」の場合、採掘の様子が再現されていないと
「ただの洞窟」ですから、一部には「ガッカリ名所」との
声も出ているそうですね。そんな状況を踏まえて
著者は、世界遺産を、ただの観光地としてとらえるのではなく、
歴史的な背景を頭に入れて訪ねることが、必要だとしています。
確かに、史跡巡りもその歴史を詳しく知っていれば、
面白さは増しますね。そんな感じでこの本は、
個々の世界遺産の内容を紹介するのではなく、
主に世界遺産の「登録概況」を知るのに
役立つ本かな、という感じですね。
本文中に出て来る「世界遺産検定」を
受験したことのある私にとっては、
既知の内容もありましたけど、
全体的には面白く読むことが出来ました。