「高齢者は暮らしていけない 現場からの報告」(はてな年間100冊読書クラブ 19/100)

高齢者は暮らしていけない――現場からの報告

高齢者は暮らしていけない――現場からの報告

  • 高齢者としての将来、明るいものではなく‥

本書は、高齢者と関わる現場で働いている
複数の関係者が分担して、様々な現場の様子を記した本ですね。
本書を読み進めていくに従って、
今後ますます、少子高齢化社会が進む日本において、
高齢者としての将来は、決して明るいものではないな、
と実感してしまいました‥
これでは、貯蓄が出来る余裕のある人は、
老後に向けてせっせと貯蓄に励むでしょうから、
日本全体の消費が上向かないのは、当然って感じですな‥
そういった現役時代における長年の積み重ねから、
高齢者間の格差は、もの凄く大きなものになってしまっています。
本書では、高齢者層においても広がっている格差社会における、
高齢者の「底辺層」の現場をレポートしていますが、
「底辺層」の生活は、厳しいものになっていますね…

  • 老人ホームの状況‥順番待ち&個室は高価

また、本書の中で特に印象に残ったのは、
老人ホームの状況でしたね。火災を起こした
群馬県の「たまゆら」事故以外、
「無届有料老人ホーム」が問題視されています。
しかし、通常の老人ホームは、長い順番待ちがあり
なかなか入ることが出来ません。そんな状況下で
やむを得ず「無届有料老人ホーム」が
ビジネスとして登場している、という感じですね。
また、無届に限らず老人ホームでは、
「プライバシーが確保出来る個室」に入ろうと思うと、
入居時に要求される「保証金」に加えて、
月々の支払料金も軽く10万円を越えたりして、
一般庶民にとっては厳しい金額になっている、
といった状況が解説されていましたね。
私は、老人ホームや病院などに入ることなく、
最期は自宅で迎えたいと思っているのですが、
本書を読んで、ますますその思いが強くなりました‥(^^;)
最期を自宅で迎えるには、まず何よりも健康が大事ですね。

  • 貧困によって、必要な治療や介護が受けられず‥

そして、「貧困」の問題も大きいですね。
もともと、国民年金だけでは生活がままならない状況の上、
また国民年金は給与天引きではないため、
自ら払込をしていないと、全く貰えません。
しかし高齢者はプライドを持った人が多く、
なかなか生活保護のお世話にはなりたがらない、
という実態があるそうですね。
その結果、貧困にあえぐ高齢者が多いそうです。
また、貧困の結果、医療費が払えなければ、
医者に行くのを止めざるを得ません。
介護が必要でも、同じように料金が払えずに
必要な介護が受けられなかったりしますね。
たとえ健康な体であっても、収入が足りずに
家賃が払えなければ、ホームレスになってしまいます…
格差・貧困の問題は、健康を害していることの多い
高齢者にとって、より大きな問題だな、と実感しました。

日雇い労働者が仕事を求めて集まる、
東京・山谷地区のレポートも掲載されていましたけど、
これもまた気が沈むような内容ですな‥
いわばネットカフェ難民の高齢者版、のようなものですが、
ホームレス生活の悲哀、坂を転げ落ちるようなその経緯など、
読んでいて身につまされました‥
実際に起こっている事象を記すルポルタージュは、
その内容が深刻であればあるほど、読者に衝撃を与えますね…
本書にある通り、高齢者層では、底辺層を中心として、
深刻な問題になっていますが、今の借金だらけの国では
これらの問題の全ての解決は、全くもって不可能でしょうねぇ‥
そう考えると、暗澹たる気分に陥ってしまいます…