「これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学」(はてな年間100冊読書クラブ 8/100)

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

  • 小難しい「政治哲学」を、身近な事例と絡ませて解りやすく

ハーバード大学で行われている、
「政治哲学」の人気講義を、書籍化したものですね。
大学の政治学科出身の私でも、「政治哲学」というと
まだまだ小難そうな感じがしてしまいます。
まぁ、私は大学で勉学に励んだ訳ではないのですが‥(笑)
本書ですが、カントやベンサムといった哲学者、そして彼らの主張と、
現代に発生している身近な例(マイケル・ジョーダンなど)を
上手くリンクさせて、解りやすい内容に仕上がっていますね。
なるほど、身近で具体的な事例と関連させてくれれば、
難しい「政治哲学」も、身近なものとして腹に落ちますね。

  • 「唯一解は無いが、決断が必要」な問題に、どう対応するのか?

本書のタイトルにもなっている「正義」、
その「正義」をめぐる問題とは、「唯一の正解は無いが、
なんらかの決断は必要」な問題、とのことですね。
例えば、日本が未だに悩まされている戦後補償の問題や、
大学における少数民族の優先入学、所得の再分配
このような内容が取り上げられていますね。
優先入学の問題であれば、「平等」を取るのか、
少数民族を優遇して、評判アップ」を取るのか、
どちらかの判断を迫られるわけですが、
上記の二つの意見は、どちらにも正当な理由はあります。
過去の哲学者は、例えばベンサム功利主義の立場に立ち、
ロールズはこれに対して、民主主義的な立場に立っています。
彼らは、それぞれの立ち位置に立って、
上記のような「唯一解は無いが、決断が必要」な問題に対して、
自らの持論を展開している、という感じなのですね。
翻訳にしては比較的読み易い訳かと思いましたが、
それでも元々の内容が少々難しく(^^;)
本書を一通り読み通すのは大変でした。
しかし、読み終わってみると、「政治哲学」とはどういうものなのか、
ということがなんとなく理解出来たような、そんな感じがしました。