「楚漢名臣列伝」(はてな年間100冊読書クラブ 3/100)

楚漢名臣列伝

楚漢名臣列伝

「楚漢」、あまり聞き慣れない言葉ですが、
「楚=項羽、漢=劉邦」とすれば、解りやすいかと思います。
秦朝末期から漢の建国までの間に
項羽劉邦を支えたりして活躍した、
「名臣」の列伝になっています。
この1冊に、10人分の「列伝」が収録されていますね。
そのため、一人あたりに割かれている枚数は多くなく、
著者の一連の小説のような、「主人公をはじめとする
登場人物が魅力的で、物語の世界に引きずり込まれる」といった
そこまでのインパクトはありません。
ただ、コンパクトにまとめられているため、
「楚漢時代の著名人物について、簡潔に知りたい」
という点では、有効か本なのかなと思います。

  • 劉邦が勢力を伸ばす様子を、何度も目にするのは‥(^^;)

この時代は、「柄は悪いものの、何故か人望はあり、
家臣に支えられて天下を統一した」劉邦
中心に位置づけられています。本書の登場人物も
張良や蕭何といった、劉邦の家臣が多く、
劉邦に触れている箇所も、必然的に多くなりますね。
そして、例えば有名な「鴻門の会」は、
張良」編では劉邦側、「范増」編では項羽側から見た描写、
といったように、視点の違いはあるものの、
同じ出来事も何度も登場してきますね。
私は、「柄が悪いのに人望だけはある」、
「天下統一した後は、功臣を粛清しまくり」
といった劉邦は、あまり好きではないので(笑)
本書を読み進めていくと、
劉邦が勢いを伸ばしていく様子を
何度も目にすることになるので、
正直あまり面白くは無かったですね‥(^^;)

  • 筋の通った行動をする人物は、気持ちいいですね

劉邦項羽の家臣に触れている箇所では、
楚漢戦争の内容の記述が多い中で、
陳余や田横など、直接楚漢には関係の無かった
(間接的には、巻き込まれていますが)
人物についての記載箇所は、興味深かったですね。
例えば田横なら「斉国の再興」といった感じで
それぞれ明確な目的を持っています。
そして、楚漢戦争に巻き込まれて、
同じ意思を持った同族や朋友が、その過程で挫折する中で、
この2人は、最後まで一本筋の通った行動を貫いています。
乱世の時代のため、最後まで一本筋の通った
行動を貫いても、実現はしなかったりもするのですが、
読後は爽やかな気持ちになりましたね。

  • 崩壊していく秦にも、忠臣あり

あと、個人的には、秦将の章邯も印象に残りました。
始皇帝の死後、秦は二世皇帝の子嬰を抱いた
奸臣・趙高の独裁政治となります。
各地で秦に対する反乱が起きます。
しかし章邯は、そんな秦のために奮戦し続けるのですね。
これも一つの、一本筋の通った行動ですよね。
最後には項羽に降伏しますけど、
その後は、劉邦には寝返ることは無かったそうです。