「俺の感性が羅針盤(ジャイロコンパス)だ! 人生の答案用紙にナビはない」(はてな年間100冊読書クラブ 94/100)

俺の感性が羅針盤だ!―人生の答案用紙にナビはない

俺の感性が羅針盤だ!―人生の答案用紙にナビはない

  • 「痛くない注射針」を開発した、頑固一徹の職人さん

著者の岡野雅行さんは、「痛くない注射針」の開発など、
「世界一の職人」とも言われている、凄い職人さんとのことですね。
本書は、そんな岡野さんによる、
仕事論・職人論といった内容に仕上がっています。
岡野さんはいわゆる、昔気質の職人さんといった感じですね。
学歴も無く、国民学校を卒業して、家業の金型工場を手伝っていますから、
その技術は全て、自分の経験から学んだものと言えるでしょうか。
「痛くない注射針」を開発する過程で、
何度も何度も失敗して、コストもかかりながら
諦めずに成し遂げる執念などは、これぞ職人技、という感じです。
上記の通り、学歴の無い岡野さんにとっては、
知識は全て現場から得たものになりますが、
その岡野さんがこれだけの成果を挙げるということは、
やっぱ製造業には現場が大事なのだな、と実感させられますね。

  • 職人技だけではなく、経営センスも身につけて

そんな職人気質の岡野さんですが、
会社経営のセンスも持ち合わせているところは、凄いですね。
これもまた、家業を回していた経験から来るのでしょうけど、
「個人が特許を持っていても、大企業に潰されてしまう」
という信念から、「痛くない注射針」の特許は、
テルモと共有することにしています。
共有によって、他企業の圧力を防ぎ(テルモを敵に回すことになります。)
そして、特許維持にかかる費用は、テルモに負担して貰う(笑)
といった感じですね。なるほど、中小企業ならではの
生き残り策といった感じもしますけど、ただの職人技だけではなく、
事業主としてのセンスを持っているところは、
普通の職人さんとは少し違うな、という感じはしました。
不況下において厳しい経営を強いられている、
中小企業の経営者・関係者にとっては、
参考になることが多い内容ではないかと感じました。