「名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉」(はてな年間100冊読書クラブ 3/100)

名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 (光文社新書)

名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 (光文社新書)

  • 子供の学力は、本当に低下しているのか…?

いわゆる「ゆとり教育」の導入により、
近年「学力低下」が叫ばれています。
ゆとり教育」については、先日見直しが発表されましたが、
本書では、その根拠(授業時間を削減したゆとり教育が、
学力低下を招いた)に異議を唱える内容になっていますね。
例えば、東大の70年代の入試問題と現代の入試問題を比較し、
現代の問題のほうが遥かに難しくなっていることから、
学力低下は、一概にはあてはまらない」としていますね。
ただ、少子化により大学全入時代を迎え、
中堅以下の私立大学による、AO入試での青田買いなどにより、
「勉強をしなくても、大学に入ることが出来る」
ようになっています。そのため、「勉強する層と勉強しない層」の
格差が、絶望的なまでに開いてしまっています。
「勉強しない層」の増加が、世代全体的に
「学力が低下」しているように見えてしまう、という感じですね。

  • 地方の多くの高校生は、勉強を止めてしまう…

例えば、秋田県福井県は、中学の全国テストでは
学力は全国でも上位に位置しているのですが、
大学進学の実績は、おもわしくありません。
これらの県には、地元の国立大学以外は
今や「誰でも入れる」私立大学しかありません。
そのため、「国立大学を目指す層以外は、
勉強をしなくなってしまう」、と著者は分析していますね。
一方で、有名中学校(桜陰中)と、大学(和歌山大学)で
同じ文章が入試問題に使われ、問題としては
むしろ桜陰中のほうが難しい!といった例からも、
トップクラス層の学力は、決して低下していない、としています。

  • 日本の大学(システム)に、問題有り

そして、著者は、日本の大学に問題があるとしていますね。
少し前に話題になった「分数のできない大学生」の本を例に取り上げて、
「大学で基礎教育を実施していないことを棚に上げ、
学力低下を高校以前の教育に押し付けている」、
「必要だと思う能力なら、入試で見極めれば良いのに、それをしていない」
(=私大文系では、数学を課さない大学が多いです)
と批判しています。以前は「入学するのは難しいが、
いったん入ってしまえば、卒業するのは簡単」と言われていた
日本の大学ですが、「大学全入時代」の今では、
入学すらも簡単になってしまっていますね。
まぁ確かに、日本の大学は、文系学部を中心に
レジャーランド化してしまっているのは周知の事実です。
学生側も「社会に出るまでの、最後のモラトリアム期間」
という認識ですからね…(^^;)
まぁ確かに、教育システムの頂点に君臨する
大学(大学入試)を変革すれば、高校以下もそれにつられて
変わることを余儀なくされそうではありますね…
高校や中学を変革するよりも、効果は大きそうです。