「平気で冤罪をつくる人たち 誤判は必然的に生まれる」(はてな年間100冊読書クラブ 114/100)

平気で冤罪をつくる人たち (PHP新書)

平気で冤罪をつくる人たち (PHP新書)

  • 元裁判官の著者による、「裁判」の現実

足利事件や痴漢冤罪などの、様々な冤罪が話題になる中で、
「どうして、そのような冤罪が生み出されるのか」を、
元裁判官の著者が解説した本ですね。
著者は元裁判官だけあり、裁判官(裁判所)の現実に詳しいですね。
昔の社会科の授業で習った「三権分立」のもと、
裁判所(裁判官)は、完全に独立した立場で、
自らきちんと審議して、最後の審判を下しているかと思いきや、
実際のところは、「起訴された刑事事件の有罪率は99%」とのことです。
「検察の起訴という事実を、ほぼ鵜呑みにしてしまっている」
というのが、裁判の現状という感じですね。
「検察は、確固たる証拠がある事件のみ起訴し、
一旦起訴された事件は、ほとんど有罪となる」、という仕組みのようです。
従って、「不起訴で無罪放免になるケース」では、
「完全なシロ、無実の冤罪」と、「シロとは言えないが、
証拠が足りなくて起訴出来なかったケース」の、両面があるようですね。

  • 痴漢の冤罪の場合は、駅の事務室には行かずに、無実を主張するべき

そして、本書では、痴漢で捕まるケースの実態や、
足利事件で冤罪が引き起こされた原因について、解説を加えていますね。
痴漢の場合は、一旦駅の事務室に連れ込まれたらアウト、
それ以降は、駅員も警官も「疑いの目」でしか見てくれないそうです。
冤罪の場合は、「事務室に行って、冤罪を主張する」
という考えは捨てるべきであり、
事務室に連れ込まれる前に「自分は無実である」ことを、
徹底して主張し続ける必要が、あるそうですね。

  • 歴史が浅く、精度が低かったDNA鑑定

足利事件の場合は、まだ歴史の浅かった、
DNA鑑定の精度の低さが、原因だったようです。
DNA鑑定の歴史が浅かったこと、
及びお年を召した裁判官は、当時の最新の技術である、
DNA鑑定についての知識を持ち合わせていません。
そのため裁判官は、審判時には検察の判断に対して、
異議を挟むことも無かったようですね。
なるほど、新技術ならではの思わぬ落とし穴、
といった感じでしょうか。ただ、
著者は、自ら検証した結果として、「足利事件の、過去の有罪判決は
当時の水準からしても誤りであった」と主張していますね。