「かけら」(はてな年間100冊読書クラブ 109/100)

かけら

かけら

本書には3編の短編が収録されており、
そのうち本のタイトルにも採用されている「かけら」が、
第35回の「川端康成文学賞」を、史上最年少で受賞していますね。
本書の作者・青山七恵さんは、
「ひとり日和」という作品で芥川賞も受賞しています。
まさに現代期待の若手作家、という感じでしょうか。
その「かけら」は、「家族で日帰りバスツアーに行くことになっていた
女子大生の主人公ですが、皆の都合が悪くなってしまい、
最終的には、父と二人で旅行に出掛けることになります。
父と二人きりでは会話も弾まないバスツアーで、
写真の教室に通っている主人公は、旅先で写真のネタを探すも
なかなか思ったようなネタが見つからずに…」という感じの展開ですね。
旅行から帰って写真を現像してみると、
普段とは違った印象の父の写真があり、
これも日常生活の一つの「かけら」…というラストになっていました。

  • 何気ない日常を、淡々と描くのが上手い著者

本書に収録されている、他の2作品ですが、
一つは「現在の彼女との結婚を間近に控えて、
元カノとの思い出を清算しようとする主人公」を描いた、「欅の部屋」ですね。
そしてもう一作品は、「主人公の新婚の夫婦の家に、
沖縄から大学見学のため上京してきた従姉妹が
暫くの間泊まることになります。その素朴な従姉妹の存在が
二人の生活に波紋を呼ぶ」「黒猫」ですね。いずれの作品も、
「何気ない平凡な日常」に焦点をあてて、淡々と描いていますね。
著者の芥川賞受賞作「ひとり日和」もそうでしたけど、
こうした「平凡な日常を穏やかに淡々と描く」という点で、
著者は上手いな〜という感じですね。
人間は一般的に、波乱万丈の人生というよりは、
平凡な日常を送っている人が多いでしょうから、
著者の作品は、多くの読者の共感を呼びそうな感がありますね。
ただ、短編3作、1時間もかからずに読めてしまう分量のため、
ボリューム的に物足りないと感じるケースも、あるかもしれません…