「終着駅」(はてな年間100冊読書クラブ 85/100)

終着駅

終着駅

  • 今まで書籍化されていなかった原稿を、寄せ集めて‥

数年前に死去した、鉄道紀行作家・故宮脇俊三さんの
書籍化されていなかった原稿を、収録した本ですね。
寄せ集めという感じで(笑)、
書評や文庫の解説まで、収録されていますね。
歯科技工士関係の雑誌に掲載されていた、
本書のタイトルにもなっている「終着駅」の連載が、
メインでしょうか。ただ、鉄道好きの宮脇さんが
「終着駅」を訪れることは多く、
他の書籍で既に触れられているような内容もあり、
正直、余り目新しさは感じませんでした。
重複する内容が多いため、書籍化のタイミングを
今まで逸していたのではないか、という感じですね。

  • 上がり症を克服したいきさつも‥

そんな中で面白かったのは、
宮脇さんの学生時代について、書かれた内容の記事ですね。
嘗ては上がり症であった宮脇さん、
学生時代所属していたテニス部では、
試合で上がってしまい、好成績を残せていませんでした。
しかし、相手の戦術を先読みする頭脳プレーによって、
次第に試合に勝てるようになります。
試合に勝つことにより、いつの間にか上がらなくなった、
という内容でしたね。他の書籍では見かけたことの無い
宮脇さんの一面って感じでした。
紀行本とか読む限りでは、普段は物静かな方なのかな、
なんて思っていたのですが、意外な感がしましたね。
もっとも、サラリーマン時代は中央公論社
常務まで上り詰めた方ですから、物静かなだけではなく、
仕事でも切れ味を発揮していた、ということですよね。

その他に、鉄道好きとはいえ、
鉄道車両が好きな「車両派」ではなく、
鉄道に乗って旅行することが好きな「乗り鉄派」として、
紀行文を取り上げることが多かった、
鉄道ジャーナル」誌にエールを送っているような
内容の記事があるのは、少々意外な気がしました。
鉄道車両に重きを置いている、
「鉄道ファン」・「鉄道ピクトリアル」各誌よりも、
列車追跡等のルポルタージュに力を入れていた
鉄道ジャーナル」誌が宮脇さんのお気に入り、
というのは納得です。しかしその割には
鉄道ジャーナル」に宮脇さんが記事を寄稿することは、
なかなか見かけなかったので‥
ただ、この本には、宮脇さんが「鉄道ジャーナル」に
寄稿した記事が何本か収録されていました。
実際には縁があった、ということなのでしょうか。