「俺は、中小企業のおやじ」(はてな年間100冊読書クラブ 80/100)

俺は、中小企業のおやじ

俺は、中小企業のおやじ

  • 付加価値の少なさ、ニッチャー的な戦略から「中小企業」と

軽自動車No.1メーカー・スズキの社長である、
著者の鈴木修さんが、自らの経営哲学を語った本ですね。
スズキは売上高が3兆円に達する、「大企業」ですが、
著者の鈴木社長は、「スズキは中小企業である」と
言い切っていますね(笑)
まぁ、「売上高は3兆円を計上するものの、
購入部品等を除いた、自社が付加している付加価値は
ぐっと小さくなってしまう」というのが、その理由のようです。
また、「他の自動車メーカーが本格進出することの無かった、
軽自動車市場に進出」、「他の自動車メーカーが進出しようとしなかった
インドに進出」など、その戦略が、ニッチャー的なところがありますね。
そんなところも、鈴木社長に中小企業的な意識を
持たせているのでしょうか。

  • コスト意識、経営意識は、鋭く厳しいですね

また、自ら「中小企業」と言い切るだけあり、
経営意識は非常に鋭いというか、厳しいものを持っていますね。
徹底して無駄を省き、コスト削減に取り組む姿勢や、
トップ自ら国内外の工場監査に赴き、
自ら改善を指摘するところなどは、
「ものづくりを行うメーカーの経営者は、かくあるべき」、
といった印象も受けます。
また、現在の不況に際して、もう80近い高齢ながら、
自ら社長に復帰したりもしていますね。
この本を読む前、この社長復帰のニュースを聞いた時は、
「なんてワンマンな創業家社長なんだろう…」
って思いました。しかし、この本を読んでみて、
「後継者候補が不在となった現状、自らやるしかない」という、
強い危機意識の表れだったことが、理解出来ました。
まぁ、後継者候補を複数育てておらず、
後継者候補の急逝に際して、代替案が無かったことは
自省しておられますが…。

  • 色々な転機や危機を経験し、上手く乗り越えて…

そんな鈴木社長ですが、過去には色々な転機や危機があり、
見事に乗り越えたり、上手く対応されて来た様子が、
本書からは伺えますね。
直面した危機の例として、以下のような例があります。
・法規制に対するエンジンの対応が出来ず、
トヨタの助けを仰いだこと
・本社部門との対立と、飛ばされた挙句の、困難な工場立ち上げ
(この立ち上げは、著者が意地で成功させましたが…笑)
二輪車業界シェア上位のホンダとヤマハの覇権争いに巻き込まれ、
シェア3位以下企業の悲哀を実感
・US工場の立ち上げには失敗、スペイン事業も失敗
・インド進出は、申請が間に合わなかった…
一方で成功例としては、以下のような例がありますね。
・軽自動車「アルト」の大ヒット(名称の由来は
イタリア語だったようですが、説明が小難しくなるため、
即興で思い浮かんだ、「あると便利」の駄洒落を使ったそうです…(^^;))」
・4輪駆動の軽自動車、ジムニーの成功
GMとの、自立を保ちながらの提携
・インドやハンガリーへの進出
・車高の高い軽自動車「ワゴンR」の大ヒット

  • 即断即決の行動力は、さすがですね

さすが、偉大な経営者ともなると、
エピソードには事欠かない、という感じですね。
また、様々な危機に直面したときの行動力は
さすがだなという感じがしました。
例えば、「アメリカでクレームが多発していた時」は、
日本にいて指示を出すのではなく、早速自らアメリカに乗り込みます。
そして、アメリカの担当弁護士が頼りにならないと見るや
すぐにGMのツテをたどるなど、即断即決の対応は見事だと感じました。
その他には、インドへの進出にあたっては、
申し込みの締め切りを過ぎていたものの、担当者に頼み込んでいます。
また、インドから担当者が訪問した時、
著者はアメリカへ出張予定でしたが、
時間をやり繰りして会っておいた事などが
ビジネスパートナーとして選ばれたことに、繋がったそうですね。
今やスズキを語る上では、欠かせない存在感を持つインド事業ですが
決まるまでは綱渡りの箇所もあったんだな、と実感しました。
この時スズキがインド事業を取れていなかったら、
今のスズキは、果たしてどうなっていたでしょうか…?