「女流阿房列車」(はてな年間100冊読書クラブ 65/100)

女流阿房列車

女流阿房列車

著者の酒井順子さんは「負け犬の遠吠え」でお馴染みですが、
実は「鉄子」(=鉄道好きの女子)だったそうですね。
その酒井さんによる、様々な鉄道旅行記ですね。
スケジュールは出版社の担当者が立案し、
酒井さんはそのスケジュールに沿って、
淡々と列車に乗っていますね。
担当者が鉄道に詳しいということもあり、
「東京の地下鉄を、16時間かけて全線完乗」
「鈍行列車、24時間乗りっぱなし」といった
かなりハードなスケジュールとなっています。
そんなハードなスケジュールなのですが、
酒井さんは全体を通じて、淡々と乗りこなしていますね。
この感覚は少し不思議だな、という感じがしました…(^^;)
自分の立案したスケジュールであれば、
ハードでも面白くなくても、自業自得です。
しかし、他人の立案したスケジュールが
ハードだったり面白くなかったりすると、
「乗らされ感、やらされ感」が、
強く出そうな気がしてしまうのですが…(^^;)

  • 著者が異なると、同一の旅行記でも、異なってきますね…

このあたりは、著者も書いていますが
人間性」の違いなのでしょうね。
「どんな旅をするのか、そこには人間性そのものが出る」
といった感じですね。これを端的に示しているのが、
マンガ「鉄子の旅」とのコラボレート企画である、
秘境駅の女」の章ですね。酒井さんの文章と、
コラボ相手「鉄子の旅」の、
菊池直恵さんのマンガの両方が収録されています。
これが、両方とも同一工程の乗車記なのに、
視点やテンションが凄く異なっていて、
その違いっぷりが、面白かったですね(笑)
まさに人間性の違いが良くでているな〜という感じです。
酒井さんは常に淡々としている感じがあり、
乗車記も、終始淡々とした感じで書かれています。
一方、「鉄子の旅」メンバーの、横見光彦さん(秘境駅マニア)は
「自分のお薦めの景色やスポットを、ぜひとも見て欲しい」
という感じで、凄くハイテンションです。
鉄子」メンバーは、菊池さんなど横見さん以外の人も、
そのハイテンションに慣れている(慣らされている…笑)
という感じで、マンガもテンションが高いのですね…(^^;)
このテンションの違いは、同一の旅行記とは思えない位でした(笑)

  • 「鉄道旅行記」として見ると、物足りなさも感じます…

ただ、「鉄道旅行記」として見ると、
少々物足りなさを感じてしまうところがありますね。
例えば、著者は乗車中に居眠りをすることが多く、
時には絶景を見逃したりもしてしまったりしています。
そのため、「寝ずの旅」という企画も、本書にはありますね。
居眠りして車窓を見逃すため、旅行記の内容が
食べ歩き中心になってしまったりとか…(笑)
乗車中にしばしば眠ってしまうのに鉄道旅行が好き、
というのも、個人的にはよく解らない感覚ですね…(笑)
楽しみが旅先での食べ歩きにある、というのであれば解りますけど。
著者は、この旅行記を、旅行作家・宮脇俊三さんに対する、
オマージュとしています。(題名は、内田百間さんの「阿房列車」より)
しかし、宮脇さんであれば、乗車中に居眠りをすることはあっても
それは稀であり、絶景を見逃すなんて、
「鉄道旅行者として、ありえない」と思います…(^^;)

その他では、「鉄子の旅」と同様、
スイッチバックのマニアな人に振り回されつつも、
鉄子」である著者はその状況を楽しんでいたりする
内容の旅行記が、あったりしますね。
こうしてみると、本書に登場する男性の鉄道マニアは
その行動が徹底しているというか、粘っこいというか、
まさに典型的な「マニア」ですな…(笑)