「スープで、いきます 商社マンがSoup Stock Tokyoを作る」(はてな年間100冊読書クラブ 3/100)

スープで、いきます 商社マンがSoup Stock Tokyoを作る

スープで、いきます 商社マンがSoup Stock Tokyoを作る

  • 「おいしいスープを提供したい」という著者の思い

人気のスープ専門店「Soup Stock Tokyo」の
立ち上げ奮闘録、という感じですね。
著者は、三菱商事に勤めながら、
社内ベンチャー制度を利用してスープ店を開業、
自らも出資して会社を立ち上げます。
「おいしいスープを提供したい」という
「著者の思い」が、厳しい品質管理などに現れていますね。
最近はファーストフードのような、
チェーン店になりつつあると思っていた
Soup Stock Tokyo」、無添加など、
そこまで品質にこだわっているとは、思ってもいませんでした。

  • 新事業が承認される際の、生資料も掲載されています

また、三菱商事に籍を置きながらの
社内ベンチャーという形での開業ということで、
「裸一貫、失敗したら後が無い」という状況ではなく、
大商社・三菱商事をバックに控えた、楽な形での創業です。
しかし、著者からは、裸一貫系のカリスマ創業者に
見られるような、事業への熱い思いが感じられますね。
上記のような、品質にこだわるスープを提供しようとする思い、
またその思いを、自ら積極的に動いて
実現にこぎつけたことなど。
この本では、事業を上層部に承認して貰う時に実際に使用した、
「スープのある一日」という、生資料も掲載されています。
会社内で新規事業(新規商品)を実現しようと
考えている人たちにとっては、
参考になる面も多いのではないでしょうか。
実際に企業内で使用された企画書なんて、
なかなか目にする機会は無いですから…

  • 著者は、芸術家という一面もあったりします…

また、本書の著者は、スープストック事業とは
全然別の、家具やパッケージのデザインを行い
個展を開いたりもしているそうです。
このあたりの芸術的センスのあるところは、
上記のいわゆる「裸一貫系のカリスマ創業者」とは
少々異なるところですね。カリスマ創業者って、
「自分が作った事業第一」の
「仕事の鬼・仕事一筋」って感じがして、
芸術的感性なんて、すっかり置き忘れてしまったような
人達が多いですから(笑)
本に掲載されている著者の写真もそうですけど、
芸術家肌の、穏やかそうな一面も見せています。
普通は経営者と芸術家って、
両立しなさそうな感がありますけど(笑)
その両方を兼ね備えた著者によって、
新事業とともに、「スープのある風景」という文化も
新しく根付いたのかのしれないですね。

  • 華やかな影では、やはり色々苦労も…

もっとも、一般人の目からは
ここまで順調に来たかと思われていた、
「スープ・ストック・トーキョー」ですが、
東京・溜池のオフィス街に開店した店が、
オフィス街のため平日昼間以外の集客に苦しんでしまう、
猛暑でスープが売れなくなってしまう、など
ここまで波乱万丈を経てきたことも、窺えますね。
穏やかそうな感のある著者ですが、
さすがにこの時は相当危機感を覚えたとか…(^^;)
また、著者が最初この事業を立ち上げたときは、
著者はケンタッキー・フライドチキン(三菱商事系)に
出向していて、KFCの一事業だったそうです。
ひょっとすると、「スープ・ストック・トーキョー」の店頭に、
カーネル・サンダースおじさんが
飾られていた可能性も、あったのでしょうか…(笑)