「古城の風景〈5〉北条の城」(はてな年間100冊読書クラブ 10/100)

古城の風景〈5〉北条の城

古城の風景〈5〉北条の城

  • タイトルは「今川の城・北条の城」のほうが、良さそうな気が‥

歴史小説家の宮城谷昌光氏が、
東海地方の古城を巡る本シリーズも、はや5冊目ですね。
今回の題名は「北条の城」と銘打たれていますが、
小田原や関東地方に舞台が移ったのではなく、
前作<4>の「徳川の城・今川の城」に引き続き、
静岡県内が舞台になっています。
後半には、韮山城など伊豆の諸城が登場し、
タイトルの「北条の城」の紹介になって来ますがが、
前半は、駿河遠江の城がメインですね。
タイトルは「今川の城・北条の城」としたほうが
スッキリするような感があります。
もっとも、北条家の祖・北条早雲は、
駿河今川家や駿河地方に関係は深く、
この本に取り上げられている城々にも関わっているため、
「北条の城」とシンプルにしたのかもしれないですね。

  • 斯波→今川→徳川・武田と、支配者は移ります‥

本シリーズは、宮城谷氏が、
実際にこの本に取り上げられている諸城を巡って
歴史に思いを馳せる、という展開になっていますね。
故・司馬遼太郎氏の「街道を行く」シリーズに
通じるものがあるのではないかと思います。
前半の、遠江の諸城の項では、
今川家(今川義元)が遠江に勢力を広げ、
斯波氏の勢力を駆逐していく様子が描かれていますね。
そして駿河の諸城の項では、
勢力を伸ばした義元が、桶狭間の戦いにて敗死した後、
武田家(武田信玄)と徳川家(徳川家康)が、
今川領を侵略する様子が描かれています。
今川家にとって、両家とも敵になりますが、
義元の子・今川氏真は、史実を元に
徳川家よりも武田家(信玄)のほうに恨みが強かった、
なんて想像もなされていますね。

  • 後半は、伊豆の北条の諸城に

後半は伊豆の北条の諸城に、話が移ります。
室町幕府堀越公方が拠点を置いた堀越御所や、
武田家と北条家の戦い、
そして豊臣秀吉の小田原攻めでは、
北条方は、これらの出城にて豊臣側を迎え撃つことはせず、
豊臣軍が近づいたら退去して、
小田原城に籠もる戦略を取ったようですね。
従って、これら伊豆の諸城は、秀吉との戦いの舞台とは、
無縁だったとのことです。
北条側の武将としては、
徳川家康と同様に今川家の人質経験があり、
そこで家康と親交を結んだ北条氏規などが
取り上げられていました。