「観光都市 江戸の誕生」(はてな年間100冊読書クラブ 5/100)

観光都市 江戸の誕生 (新潮新書)

観光都市 江戸の誕生 (新潮新書)

  • 江戸における、江戸市民のための観光事情

首都に集まってくる庶民に加え、
参勤交代で大名にお供する武士等も集まり、
当時世界屈指の巨大都市となっていた
江戸時代の首都・江戸の観光事情を、
取り上げた本ですね。江戸時代が好きな人なら、
なかなか楽しめる本ではないかと思います。
江戸時代の観光というと、弥次喜多道中の
東海道中膝栗毛」でお馴染み「伊勢神宮参拝」を
思い起こさせますが、この本では、
「江戸における、江戸市民のための観光事情」を
取り上げていますね。江戸時代は、各地に関所がありました。
また防衛上の都合で、大井川に橋が架けられていなかった
ことなど、旅行には不便な状況だったこともあって、
江戸内で済むお手軽な観光が、盛んだったということでしょうか。

  • 寺社参拝、ご開帳、大名屋敷にも神仏を勧請

そんな江戸における観光は、
寺社参拝が中心だったようですね。
ただ、「参拝よりも、参拝後の門前町でも食べ歩きが楽しみ」
といった状況は、今も昔も変わらないようです(笑)
まぁ、昔は今よりも娯楽が少なかったことでしょうから、
「非日常的な空間」において、江戸っ子達は
大いに羽を伸ばしたことでしょうね。
また、善光寺など全国各地の有名寺社による
宝物のご開帳も盛んであったようです。
ご開帳によって、寺社側はがっちり儲けていたようですが、
一部では、疫病の流行などにより、集客数が予定を下回り、
赤字になってしまうケースもあったそうです‥(^^;)
また、各大名も江戸の大名屋敷に、
地元から神仏を勧請して賽銭を集めていたようですね(笑)
参勤交代はお金がかかり、江戸中期にもなると
各藩の財政は火の車であったようですが、
そんな金儲けもしていたんですね(笑)
幕藩体制が崩壊した明治時代、武士(士族)は
慣れない商売に手を出して失敗する例が多かったのですが、
いやいやなかなか、昔の大名家は
商魂たくましかったんですな。
もっとも、やりすぎて幕府に咎められる事も
あったそうです‥(^^;)

  • 参勤交代中の武士も、遊山を楽しむ

そんな江戸では、参勤交代に来ていた武士たちも
大いに楽しんだようですね(笑)
「憧れの江戸単身赴任」は
今も昔も変わらないようです(笑)
武士たちが残した日記によると、
江戸勤務中は、勤務自体は忙しくなく(^^;)
余った時間で彼らは、しっかりと遊山を楽しんだようです。
また、八代将軍・徳川吉宗は、
現在でも桜の名所として知られている飛鳥山
庶民の観光の場として、整備したそうですね。
もちろん人気取りという面もあったのでしょうけど。
また、上記に出てくるご開帳にあたっては、
当時の権力者にアピールして、
ご開帳をつつがなく成功させる、
といった例も出てきますね。
当たり前のことではありますが、
江戸幕府体制あってこその、
江戸の観光事情と言えるでしょうね。