「マリア様がみてる 卒業前小景」(はてな年間100冊読書クラブ 3/100)

マリア様がみてる 32 卒業前小景 (コバルト文庫)

マリア様がみてる 32 卒業前小景 (コバルト文庫)

  • 卒業式前日、名残を惜しんで

タイトル通り、卒業式前日の慌しさと
物悲しさを描いているって感じの作品ですね。
在校生は卒業式の準備に忙しく、
一方の送られる側の卒業生は暇‥かと思いきや、
未練・やり残した事とかあったりして、
色々忙しくしていますね。
そういえば昨年は、先代紅薔薇さま水野蓉子さまが
孫にあたる福沢祐巳ちゃんに「遺言」を残したり、
先代黄薔薇さま鳥居江利子さまが、
同じく孫にあたる島津由乃さんに対して、
「決戦(笑)」を挑んだりしていましたっけ。
今年は、桂さんとそのお姉さま、
美術部の美礼先輩と藻音さん、
新聞部の築山三奈子さまといった、各卒業生達が
皆それぞれに、名残を惜しんでいるエピソードが
収録されています。もっとも、短編集ではなく、
一つの大きなストーリーの中に、
エピソードが織り込まれているので、
ブツ切り間とか、そういうのが無いのは良いですね。

  • お姉さまに言えない秘密を抱え、重苦しい桂さん‥

桂さんの、先輩から貰った
「お姉さまには秘密のラケット」のストーリーは、
少々重かったですな。実はお姉さま自身が
桂さんがその先輩に憧れていることを知って、
先輩にラケットを桂さんにあげるように
お願いしていました。しかし、桂さんは
「お姉さまに内緒で貰ってしまった」と後ろめたく思い、
ラケットの存在がずっと重荷になり、
使う事が出来なかった‥
という感じのストーリーでしたね。
このストーリーを読んで、紅薔薇小笠原祥子さまと
福沢祐巳ちゃんがまだ姉妹になったばかりの頃、
お互いが気兼ね・遠慮してしまい、
言いたいことを押し殺して、
ギクシャクしてしまったことを思い出しました。
祥子さまはヒステリックところがあるので(笑)
レイニーブルー」の頃まで、
ずっとそんな感じだったような気が‥(^^;)

  • 昨年は倒れてしまった祐巳ちゃんですが‥

その祐巳ちゃんですが、
そういえば前年度の卒業式準備では、
張り切りすぎて&無理してしまって、
倒れてしまったりしていましたね。
しかし1年を経て、今回の準備の際には
周りから「忙しそうに見せずとも、
しっかりと押さえるところは押さえている」
といった様子に伺えるようです。
祐巳ちゃんもいつの間にか、
次期薔薇さまとしての風格が
出ているのかな、という感じですね。
そういえば、今回は、先代白薔薇さま
佐藤聖さまも久しぶりに登場していますね。
今回は、いつもの祐巳ちゃんではなく、
由乃さんが、聖さまに相談しにいく、
という展開でしたけど。
やっぱ聖さま、相変わらずクールで
良いキャラだなぁ~(^^;)マリみての中では、
歴代の中でも、個人的には一番立っている
キャラだな、と思います。

  • 祐巳との別れを目前にして、祥子さまにもこみ上げる思いが‥

本筋のエピソードは、薔薇の館では、
卒業する薔薇さま方の「忘れ物」を捜しているうちに、
祐巳のリボンが見つかります。
「忘れ物は無い」と妹たちに豪語していた
祥子さまと支倉令さまですが、
このリボンは、実は祐巳が祥子さまにあげたものでした‥
祥子さまが忘れ物をするはずは無く、
祐巳は祥子さまのメッセージに気づきます。
そして、祥子さまを探しに走る‥といった感じの展開ですね。
常にクールな祥子さまにも、卒業を前にして
祐巳との別れを目前にして、
押さえきれないものがあったようです‥
ただ、そこは体面を大事にする祥子さま、
卒業式本番では泣けないので(^^;)
事前に祐巳ちゃんの胸で泣く‥というところです。

ここ最近の作品では、祐巳ちゃんと
祐巳ちゃんの妹になった松平瞳子ちゃんとの
関係が中心に描かれていて、祐巳ちゃんと祥子さまの
ストーリーを読むのは、久しぶりのような感じがしました。
しかし、「マリみて」の原点は、
やっぱ祥子さまと祐巳ちゃんの姉妹だよな〜って、
改めて実感しました。上記にも書いていますが、
レイニーブルー」のあたりまで、
祥子さまと祐巳ちゃんの、お互い不器用なこともあり
時にはギクシャクしてしまう関係を
ハラハラしながら見守っていた頃が、
懐かしく思い出されますね‥(^^;)
祥子さまも祐巳ちゃんも、ほんま成長したなぁ
‥となんだか感慨深い思いです。
「祥子さまの卒業で、「マリみて
完結させても良いのではないかな」
と改めて思った次第です。