「指揮官の決断 八甲田山死の雪中行軍に学ぶリーダーシップ」(はてな年間100冊読書クラブ 65/100)

  • 八甲田山で遭難した部隊もあれば、無事に成功した部隊も

明治時代、陸軍の部隊が八甲田山の雪中行軍に挑み、
全滅してしまった事故は、映画にもなりましたね。
映画「八甲田山」の高倉健さんのセリフ
「天は我を見放したか」と共に
著名になっているかと思います。
遭難したのは青森の部隊でしたが、その一方で、
遭難した部隊と全く同じ時期に、
同じ過酷な条件下の八甲田山に挑み、
見事に雪中行軍を成し遂げた部隊がありました。
この本はその部隊(弘前隊)に焦点をあてていますね。
他の部隊が無残な失敗をしてしまった偉業を達成した、
ということで、賞賛されてしかるべき状況でしたが、
遭難部隊の悲劇を煽り、またその指揮の不味さを隠すために
その偉業は、事実上闇に葬られてしまったようです。
加えて、偉業を達成した指揮官の福島泰蔵大尉は、
その後は不良上司に逆らった挙句左遷され、
最後は日露戦争で戦死してしまったそうです‥
軍人というものは報われない存在というか、
死と隣り合わせなのだなぁ‥
と改めて実感してしまいました。

  • 冬山に挑むには、しっかりとした準備が必要

福島大尉の弘前隊が成功して、青森隊が失敗した
理由をこの本では詳しく解説しています。
しっかりと準備をしていた弘前隊に対して、
青森隊はのんきに構えていたこと、
また、弘前隊は地元の地理に詳しい
道案内を雇っていたものの、
青森隊は地元民の道案内の申し出を拒んだこと、
などと色々もっともな理由があるようですね。
遭難中に、青森隊は凍傷で次々と脱落・絶命する中で、
弘前隊は凍傷対策をしっかりと行っており、
誰も脱落することは無かったそうですね。
なるほど、優れたリーダーに導かれる
必要性というものを実感しました。
優れたリーダーというと、歴史上の事件事象は、
よくビジネス本にも応用されていますよね。

  • 自ら積極的に上官の盾となって‥

青森隊は遭難してさまよい、
次々に息絶えていく状況下において、
部下は自主的に上官の寒さの盾となり、
命を落としていったそうです‥
自分たちを遭難といった状況に追い込んだのは、
隊を主導する上官の指揮の不味さが、一つの原因です。
しかし、その上官を恨むことなく、
更には自ら積極的に上官の盾になる‥
これが軍隊というものなのでしょうか。
今の自分には、少々考えられない世界って感じでした。
こんな時代に生まれなくて良かったな、
とつくづく実感しました。