「人は仕事で磨かれる」(はてな年間100冊読書クラブ 42/100)

人は仕事で磨かれる

人は仕事で磨かれる

  • 大企業のトップが、大赤字を決断するまでの過程は‥

本書は、伊藤忠商事の元社長の著者による、
自伝のようなものですね。
著者は社長時代に、大赤字に繋がる
不良資産処理を成し遂げていますが、
その決断に至るまでの、過程や逡巡などを
本書の中で振り返っています。
「会社を潰すことになるのではないか」
「従業員を路頭に迷わしてしまうのではないか」
という思い・迷いや、資金援助を取り付けるための
銀行との折衝など、大企業のトップが置かれた状況
ならではのエピソードが沢山盛り込まれています。
生の経営が赤裸々に語られている、という感じですね。
また、「自分は、掃除屋と割り切って社長を引き受けた」
「社長を辞めたら、タダのおじさんに過ぎない」など、
日本を代表する大企業の社長でありながら、
著者の奢らない、飾らない人柄が窺えますね。
もっとも、飾らない人柄ではありますけど、
不良資産処理を成し遂げたように、
行動力は人一倍って感じです。
まぁさすがにそうでもなければ、日本を代表する
大企業の社長なんて務まらないですよね。

  • 幼少の頃から目立つ子供で‥

また、そんな著者の、幼少からの生い立ちなども
記されています。本屋の息子として生まれた著者は、
売る前の本を読みまくっていたこと、
大学時代には学生運動に身を投じていたこと
などが記されていますね。
「社長を辞めたらタダのおじさん」とはいえ、
「目立たない普通の子供」ではなく、
著者が幼少時代から、ずば抜けた
行動力・知識を持っていたことが窺えますね。
そのバイタリティーの凄さは、さすがって感じですな。
就職後の仕事面においても、自分が正しいと思えば、
上司に物怖じせずに反論する、またアメリカ出向時には、
農作物関係のエキスパートとして名を馳せるなど、
活躍ぶりを見せています。さすがは大企業の社長に
指名されるだけはあるかな、という感じでしたね。

まぁ、バイタリティーがなければ、
巨額の損失を伴う不良資産の処理なんて
決断出来ないとは思いますが。
そのバイタリティーは、社員とEメールで
直接対話を行うなどの面で
社内の従業員に向けても発信されていますね。
三菱商事三井物産などの、旧財閥系の商社が
「おっとりとした印象」を持たれているのとは
対照的に、伊藤忠商事はよく「体育会系」などと
言われたりしています。なるほど著者のような人物が
社長であれば、バイタリティー溢れる
体育会系の社風になるのも
むべなるかな、という感じはしますね‥(^^;)