「京都発見 九 比叡山と本願寺」(はてな年間100冊読書クラブ 41/100)

京都発見〈9〉比叡山と本願寺

京都発見〈9〉比叡山と本願寺

  • 最終巻は、京都の大寺で締めくくり

梅原猛先生の「京都発見」シリーズは
ひとまず今回で完結とのことですね。
本シリーズは、歴史・宗教的知識に裏打ちされた
梅原先生による、京都の古寺巡礼とも言えます。
歴史好き・旅行好き・京都好きの私にとっては
大変興味深いシリーズでしたね。
その最後を飾るのは、京都の鬼門・比叡山を本拠として
日本仏教に大きな影響を与えた延暦寺と、
戦国時代に勢力を拡大し、織田信長延暦寺
抗争を続けた本願寺浄土真宗)を取り上げています。
延暦寺本願寺、どちらも京都を語る上で
欠かせない大寺ですよね。まさに最終回のテーマに
ふさわしいという感じがします。

  • 久しぶりに比叡山に登りたくもなって‥

比叡山の章では、天台宗延暦寺)の開祖
最澄伝教大師)や、慈覚大師・円仁、智証大師・円珍
そして円仁派と円珍派の抗争などに、話が及びますね。
円仁の入唐は、唐の仏教弾圧の時期に重なったりして
苦難の旅であった事は、はじめて知りました。
(だからこそ円仁による、「入唐求法巡礼行記」は
高い評価を得られる内容に仕上がったのでしょうけど‥)
また、上記3人の他に、徳川家康のブレーンとして
活躍した天海にも、慈眼大師という称号が
授けられているそうですが、天海の場合は、
東京・上野に寛永寺を創建するなど、
「権力(江戸幕府)に擦り寄って、叡山の力を弱めた」
ということで、あまり尊敬はされていないようです‥(^^;)
そういえば私は、もう10年以上延暦寺には
足を運んでいないのですが、この本を読んで、
久しぶりに行きたくなりました‥(^^;)

そして最後を飾るのは本願寺ですね。
本願寺も現在の場所に落ち着くまでは、
京都にて天台宗法華宗織田信長などの
戦国大名と抗争を続けていましたね。
開祖の親鸞、中興の祖・蓮如、そして
西本願寺の分裂などについて触れられていましたね。
東西分裂については、徳川家康の意向が働いていたため、
敷地などの規模的には、江戸幕府から土地を贈与されたりして
東本願寺は現在西本願寺と肩を並べているそうですが、
宝物は東本願寺にはあまり分与されなかった、
など興味深いエピソードもありました。
浄土真宗といえば、東西本願寺の二派(本願寺派大谷派
が著名&主流ですけど、まだ他にも色々な分派があるのですね。
その分派と主流二派との
抗争の様子なども記されていたりしました。
まぁ勢力争いはなかなか生々しいのですが、
勢力争いの結果として、浄土真宗各派が節目の時に
まとまることが出来ないのは残念、としていますね。
本書は、延暦寺と東西本願寺の訪問記が中心ですが、
内容的には、天台宗浄土真宗の宗教史のような
ところもあって、興味深く読むことが出来ました。
宗教史ではありますが、上記にあるような
本願寺織田信長との抗争などは、
日本史上でも大きな位置を占めるイベントですよね。
昔の、宗教の影響の大きさを、改めて実感した思いでした。