「牛丼一杯の儲けは9円―「利益」と「仕入れ」の仁義なき経済学」(はてな年間100冊読書クラブ 35/100)

  • 原価計算の仕組みを、解りやすく説いている本

興味を惹かれる本のタイトルから
思わず手にとってみましたけど、
内容もなかなか面白かったですね。
序盤は、タイトルの牛丼、
そして大型テレビなどを題材にとって、
財務諸表などのデータを元に、原価の構成や
1品(1台)あたりの儲けの金額をはじき出しています。
経理業務でいう、原価計算の仕組みを
身近な例を使って解りやすく説明していますよね。
少し前にベストセラーになった
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」
に通ずる内容の本だと思いました。
牛丼1杯の儲けは9円、薄利多売の商売なんですな‥
材料費はそれほどでもなくても、
人件費やらショバ代やらで、まさにぎりぎりの商売を
しているんだなぁ‥と実感させられます。
なるほど、このような状況を見ていると、
万引きとかをされてしまうと、
数十品分の儲けがたちどころに吹っ飛んでしまい、
商売が立ち行かなくなってしまう、
というのも納得させられますね。

  • 儲けを増やすには、「出来るだけ安く仕入れること」

そして、著者がバイヤーだったこともあるためなのか、
牛丼一杯あたりの儲けを増やそうと思ったら、
部品や材料などの仕入れ価格を、出来るだけ抑えること
(=出来るだけ安く買い叩くこと)
が重要だと説いていますね。
業者の言い値で購入して高い品をつかまされていた、
など著者の業務における失敗談も盛り込まれています。
まぁ、ひたすら「安く納入しろ」と言うだけでは、
下請け業者いじめに繋がるので(下請法に引っかかって
しまいますよね‥)他社の同等品の情報など、
情報・根拠をしっかりと集めて、
値下げ交渉をすべきだと説いています。

この「出来るだけ安く買い叩くこと」を
ひたすら実践しているのが、ヤマダ電機ですよね。
大手家電メーカーの担当者を店舗に呼びつけて
「お宅の品を棚に置かない」と恐喝じみた口調で
値下げを強要する、あるいは新店舗のオープン時には
メーカーに応援要員を要求する‥
大手ブランドメーカーにも容赦ないその姿勢は、
この本が説く「コスト管理」の行き過ぎた例かと思います。
まぁ、競争が激しい家電量販店の業界で
実際にヤマダ電機は利益を出しています。
このことから、「仕入れ価格を抑えることが、
利益向上に重要」ということは証明されています。
しかし、個人的には、小売店もメーカーも
共に(納得出来る形で)潤うような、
そんなWIN-WINの関係が必要かな、と思います。
ヤマダ電機のケースは、ヤマダ電機「だけ」が潤っている
一人勝ちのケースですよね。