「下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち」(はてな年間100冊読書クラブ 4/100)

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

  • 下流志向」を子供の精神面からとらえた本

格差問題については、少し前にベストセラーになった
下流社会」をはじめとして、既に色々なところで
取り上げられています。現代社会の事象であるため、
データやインタビューなどによる実地調査が容易であり、
そういった観点から分析をする形式が多かったのですが、
この本では少し変わった視点からの
分析となっていますね。著者の内田樹さんが、
思想家ということもあるためなのか、
子供の精神面からの分析をしています。
その内容というのは、「昔の子供は、
就学前に家の手伝いなどをしており、
自分を労働者としてとらえていたため、
学校で普通に勉強に励む事が出来た。
しかし、現在の子供は、家の手伝いなどを
する機会が無くなり、初めての社会的な体験が
消費者としてである。
従って、正当な対価が得られないと判断すれば、
消費者の合理的な行動として、
そのモノは買わない(=授業を受けない)
という心理状況に置かれている」
とするものですね。まぁ、子供の心理面の分析であり、
裏づけとなるような証明は何もありませんが、
説得力のある内容ではあるかと思います。

  • ライバルが減るから、ニートやフリーターはそのままで‥

日本の子供たちは、今や積極的に「学び」を放棄し、
遠ざかってしまっている。そして、無知のままで生きる
不安も感じないため、「自分探し」をしながら
知識や技術を身につけることなく、下流生活を
さまよう‥という夢も希望も無い(^^;)
スパイラルに陥ってしまっているようですね。
なるほど、確かにそういう面もあるよな‥
と思いながら読み進めていきました。
「同世代の若者は、結果的にライバルが減るため
彼らに下流に留まり続ける事を願っている」
という表現には、思わずドキッとさせられました。
私は、第2次ベビームーム世代という
同世代の人数の多い年代であるため、
確かにライバルが減るに越した事は
無い、と感じていますからねぇ‥(^^;)
もちろん、将来的に彼等が困窮して
ホームレスになったとしても、
それは「自己責任」ということで、
税金を投入しての支援は反対、ですからね(笑)
そんな感じで、「下流社会」や「格差社会」といった
分野に関心のある人であれば、
本書の内容に賛成か否かは別にして、
興味深く読める本ではないかと思います。