「風は山河より 第五巻」(はてな年間100冊読書クラブ 3/100)

風は山河より〈第5巻〉

風は山河より〈第5巻〉

  • 最後は物足りなさもあり‥

シリーズの最終巻なのですが、
「えっ、これで終わりなの?‥」という感じの、
物足りなさを感じてしまいました。
主人公の菅沼定村は、徳川家康に仕える、
東三河に居を置く豪族です。
徳川家康の家臣といえば、
榊原康政本多忠勝らの「徳川四天王」が有名ですが、
定村はそれほど有名人ではありません。
従って、後世に名を残すようなエピソードが
無かったため、本拠地に近いところで発生した
長篠の戦いにおける活躍が最後で、
それ以降は、パッとしなかったのかもしれないですね。
従って、本書に書き起こす功績等も無かった‥
という感じでしょうか。

  • 家康の譜代の家臣は、天下統一後も優遇はされず‥

徳川家康の譜代家臣は、天下を取った後も、
過去の忠誠・功績の割には、
家康に厚遇されることはなく、
しかし最後まで滅私奉公的に家康に忠勤した、
とよく言われています。本書の主人公の定村も
その一員だったのでしょうか。
長篠の戦い以降の定村は、上記の通り
目立った活躍は本書には記されていません。
精強を誇る武田軍を、信玄・勝頼の二代に渡って
相手にして、遂に撃退する事が出来たため、
そこで燃え尽きてしまったのかもしれないですね‥
その後の家康の江戸移封によって
泣く泣く東三河の故地を捨て、上州(群馬県)に移り、
そこで没した、という程度の記述となっています。
「一将功成りて、万骨枯る」という
故事ではないですけど、家康の天下統一の陰には
多くの武士・農民達の血と汗と涙が
埋まっているんだなぁ‥と改めて実感しました‥(^^;)

  • 主人公の選択に失敗してしまった小説‥

歴史上の偉人が主人公の歴史小説であれば、
成功(例・徳川家康の天下統一)または失敗
(例・織田信長の本能寺)など、本人の死まで
劇的な展開が待ち受けており、
最後までハラハラドキドキの展開が‥
という感じです。しかし、このシリーズは
ラストの本巻に特にエピソードが無く、
盛り上がりには欠けましたね‥
そういう意味で、小説の主人公の選択に
失敗してしまった歴史小説
と言えるのではないでしょうか。
著者にとっては、地元の誇るべき英雄であり
ぜひとも小説に書き起こしたい人物では
あったのかもしれないですが‥