「少子社会日本」(はてな年間100冊読書クラブ 109/100)

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

 

少子高齢化の進行は今や既に
誰もが認識している日本の課題となっています。
子育て支援など、政府もここ最近は
真剣にこの課題について取り組んでいる
感がありますね。この本では、
その少子化問題について、上記の子育て支援のような
通常よく言われている視点以外からの
説明もありますね。著者の山田昌弘さんは
パラサイト・シングル」という言葉の
生みの親ということで著名ですね。
従って、我々若手世代に対する認識は
持っているようであり、この本についても、
なかなか納得できる内容になっていました。

  • 生活レベルを維持しようとすると、結婚から遠ざかる‥

例えば、「結婚後の生活レベルが
落ちることを考えると、男女ともなかなか
結婚に踏み切れない。女性は、生活レベルを
維持出来る「玉の輿」クラスの出現を
親元でパラサイトしながら待つが、
収入が高くない男性は、そんな女性から相手にされずに
結婚の目処が立たずずっと独身のまま。」という部分は、
個人的にも、晩婚化の一番の大きな理由だと思います。
「三十代男性の未婚の割合は、低所得者ほど多い」
というグラフは、もっともな結果ではありますが
実際にこうして見せつけられると、
かなりショッキングではありますよね‥

  • 経済成長で将来設計が可能になれば‥しかし現実は‥

この本でもありましたけど、「右肩上がりの
経済成長を復活させることにより、
若年層の将来への不安・絶望を解消させて、
将来的な生活設計を可能にする事が、
少子化脱出の要件」というのも、
もっともな意見かと思います。
ただ、日本が得意としているハイテク産業においても、
中国やインドなどの新興国の追い上げがあります。
人件費の安いこれらの国に対抗していくためには、
高賃金を支払っていては難しいため、
必然的に賃金が抑えられ(あるいは、中国などの
研修生で代用し)ワーキングプアに転落していく、
というのが現代の社会の悪循環、なんですよね‥
企業の競争力を考えると、この状態を解消するのも、
なかなか至難なことと考えられます。

  • 現代は「魅力格差」の時代‥

あと一つ、個人的に衝撃的な(笑)内容として、
「魅力格差」がありました。恋愛の自由化に伴い、
魅力の格差もクローズアップされる傾向にあり、
「結婚出来ない人は、いつまでも出来ない」
というスパイラルが発生してしまっている、
という内容でしたね。今の私もまさに
そのスパイラルに巻き込まれている、って感じかな‥(^^;)
私も現在の少子化に貢献している訳ですが(笑)
フリーターや無職ではなく、収入もそれほど
低いほうではないことを考えると、
「やっぱ魅力に欠けるからなのか」
という結論に達してしまい、愕然せざるを得ないですな‥

  • 女性と男性の、アンマッチングも‥

そして、女性の社会進出が進んでいるとはいえ、
「多くの女性は、高収入の男性と結婚できれば、
今の単純な仕事を辞めて、専業主婦になりたいと
思っている」としているのは、私も実感しています‥(^^;)
「共稼ぎは嫌だ」という女の人は
相変わらず多いですよね。一方で男性側は
給料の伸びが「成果主義」の定着化などにより
抑えられているので、結婚後も奥さんには
働いてもらいたい、という人が多いですよね。
とはいえ女性は、就職氷河期で希望通りの
職種には就けずに派遣社員として過ごさざるを
得なかったりしていたりするので、
「出来れば仕事は辞めたい」という考えの人が多く、
現在は、アンマッチングな状態に
なってしまっているんですよね‥
そんな感じで、色々と考えさせられる
内容に仕上がっていた本だと思いました。