「仕事中だけ「うつ病」になる人たち――30代うつ、甘えと自己愛の心理分析」(はてな年間100冊読書クラブ 80/100)

  • 三十代の「うつ病」の特徴とは‥

三十代の「うつ病」が増えている、という内容で
書かれている本ですね。
三十代の「うつ病」の特徴として、
著者は「職場では不調だが、趣味は精力的」
「自己中心的で、うつである事の自覚が強い」
などを特徴にあげていますね。
この「三十代のうつ病」の特徴は、
私にもあてはまる箇所が多かったので
(例えば、職場では不調だが趣味は好調、など(笑))
定義付け等はなかなか的確かな、と思います。
うつ病」は心の病なので、
その原因や症状もその時代によって
左右されたりしますよね。
このあたりは普通の病気とは違って、
うつ病の治療の難しさかと思います。

  • 「怠けているだけ」というのはどうかと‥

ただ気になったところとしては、
全体的な分析として「本当に病気なのか?
怠けているだけではないのか?」といった、
「三十代うつ病」の彼等の上司の視点で
この本が書かれているところですね。
タイトルにも「甘えと自己愛の心理分析」
などとあったりします‥
著者は三十代ではなく、少し年上であることにも
よるのかもしれませんが、ここは少し
納得のいかないところでしたね。
特に三十代後半から四十代にかかりつつある
いわゆる「バブル世代」に
こういう言い方(怠けているだけ)と
言われるのはまさに心外って感じです。
まぁ確かに、この本の中では、
「病気休暇中に海外旅行をした」
なんて例も出て来てはいますけど‥

  • 三十代前半世代のおかれている、厳しい労働条件は要配慮

現在の二十代後半〜三十代前半の世代は
いわゆる「就職氷河期」時代であり、
希望の就職先に行けなかった人が多いと思います。
そんな彼等が仕事のやりがいや人生の目標を見失い、
またフリーターや派遣社員など、
企業側の都合により厳しい労働条件におかれて、
本書にあるような「うつ病」を
発症してしまうのではないでしょうか。
それを「怠けているだけ」という感じで、
時代の流れに乗って有利な就職をなし得た
バブル世代に言われるのは、いかがなものかと
苦言を呈したくなりますね。
うつ病に対する見識が無い普通の評論家や
コメンテーターならまだしも、
精神科医である著者がそのように安易に
結論づけてはいけないのではないでしょうか。