「組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために」(はてな年間100冊読書クラブ 58/100)

組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために (ちくま新書)

組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために (ちくま新書)

  • 「経営組織論」の入門書として有効

この本は私自身が選択した訳ではなく、会社で受講した
経営品質の外部講習で薦められた本になります。
経営組織論の入門、って感じの位置づけの本で、
なかなか面白い内容の本であったと思います。
著者の沼上幹氏は一橋大学の教授とのことですが、
本の中に出て来る論調は鋭く、さすがに経営系に強い
大学の教授だな、という感じがしました。
通常の経営組織論とは違うのは、例えば本書は
「90年代以降の日本経済の低迷・アメリカ経済の活性化の
風潮に従って、日本式経営組織の一方的な否定と
アメリカ式経営の礼賛」という流れではありません。
また、単なる組織構造の説明や解説だけでも無いですね。

  • 「官僚制」は実は有効な仕組みである

著者はこの本の中で、組織の健全性のために
必要なものと、排除すべきものを示していますね。
そして「日本型組織の経営の本質は維持すべきだが、
その組織が腐らないようにすべきだ」と説いています。
その中でも、一般的には腐った組織の代表として
否定されている「官僚制」のメリットを提示し、
「官僚制」は必ずしも間違った組織体ではなく、
むしろ組織変更の基本である、としている点とか、
読んでいて目から鱗が落ちる気分に
させられたこともありました。

あと、いわゆる直接生産部門の効率化の仕組みを
間接部門にあてはめる際に「一番優秀なミドル層の時間を
ボトルネック」として、業務や組織の仕組みを作ること」
など、なるほどと納得させられるような理論もありました。
その他に、権力者(社長など)の権威を笠に着て威張る
「虎の威を仮る狐」の例えとか、
優秀な人材がその優秀さうえに、
つまらぬ仕事を増やしてしまう「ヒマな秀才」など、
「これはうちの会社でもあるよな〜」と
思わずうなずきたくなりますよね(笑)
現在の自分の会社の組織の問題点が見えてしまう(^^;)
ある意味怖い本でもあるかなって感じです。

また、一部の優秀な人の成果にタダ乗りしてしまう
フリーライダー」の存在、という点は
納得すると同時に、少し考えさせられる面もありました。
私も実は会社の中で「フリーライダー」状態で
あったこともありますからね‥(笑)
自分の希望が全く通らずに、
意に沿わない業務をさせられていた時は、
仕事にあまり力を注がずに
惰性で流していたりしていましたから‥(^^;)
そんな状態はまさに「フリーライダー」だったと思いますね。
ただ、今はもうそういう状態からは、
一応脱しましたけどね(笑)