「格差社会 何が問題なのか」 (はてな年間100冊読書クラブ 53/100)

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

  • さすが「岩波新書」らしい、手堅い構成に仕上がって

小泉純一郎前首相が在任時に「格差は何が悪い」
と言い切ったりして話題になった
格差社会」について、それに関する統計データを
収集して、経済学者の著者が分析を加えている本ですね。
さすがは岩波新書って感じの、派手さは無いものの
非常に手堅い構成になっていると思います。
少し前にベストセラーになった、
三浦展氏の「下流社会」とは正反対って感じですな。
あちらは「下流」とタイトルに銘打ったりして、
話題にはなりました。しかしその内容は
データのサンプル数が少なすぎて、
著者の独断と偏見による記述によるところが多かったのですが、
データを豊富に集めた本書は、その「下流社会」に対する
アンチテーゼ的な内容に仕上がっていますね。

  • 贅沢品に対する課税強化、所得税の累進性を再強化

著者の主張は、現在の「格差社会」は問題があるレベルと位置づけ、
例えば贅沢品に対する消費税の増税や、
あるいは所得税の累進性を再強化するなどの
社会的な所得再分配施策が盛り込まれています。
貧乏人の私からしてみると(^^;)著者のこういった
「金持ちからもっと搾取しろ」的な主張には
賛成出来る面が大きいのですが、経財界・高所得者層と
しっかり結びついている現在の自民党政権では
こういった政策は実現するのは難しそうですね‥
累進性の強化は、村上ファンド村上世彰代表が
シンガポールに高飛びしようとしたように、
高額所得者の海外流出傾向が、進んでしまう懸念もありますし‥
むしろ著者の主張的には、日本共産党あたりと
近いかもしれないですな(笑)

  • 個人的には「格差社会」は是正すべきだと感じます

ただ、最低賃金生活保護の支給金額を下回るとか、
明らかにおかしいと思われる状態も存在しており、
そのような点は見直しを図るべきであると思います。
一生懸命に働いた人の収入が、
働かずに生活保護の支給を受ける人の収入を下回るというのは、
ワーキングプアもここに極まれりという感じですよね。
北欧諸国は、社会保障も手厚い反面、
税率も高いというデメリットがあります。
一方、「自己責任社会」の典型であるアメリカでは、
「健康保険」という制度は無くて、貧乏人は
医者にかかることが実質出来ない状態になっているようですね。
個人的にはアメリカ型社会はやっぱ嫌だな、と思います。
「優秀な人のやり甲斐を殺いでしまう」
という意見もありますが、格差は不平等でもありますし、
是正していく必要があると感じます。
例えば、親の収入状況によって、子供の教育機会が奪われて、
「貧乏人の家庭は子供も貧乏に」といった
ループが出来てしまうのは避けるべきでしょうね。