「この国のけじめ」(はてな年間100冊読書クラブ 17/100)

この国のけじめ

この国のけじめ

昨年のベストセラー「国家の品格」の作者・藤原正彦さんの
エッセイ集ですね。実は私はまだ「国家の品格」は
読んでいないのですが(^^;)この本を読む限りでは、
国家の品格」のほうも、読んでみたいという気に
させられた一冊、という感じでした。
そんな状況なので、著者の藤原正彦さんは数学者である、
という程度は理解していましたが、
父親が作家の故・新田次郎氏ということは
全く知りませんでした。なるほど父が作家であるからこそ、
理系の典型である数学者の著者が、
ベストセラーになるような本を著すことが
出来るんだなぁ、と思いました。

  • 作家を父に持つ藤原家の様子が面白かったです

この本のメインは、序盤の「国家の品格」と
重なる箇所もあるかと思われる箇所かと思います。
ただ個人的には、父そして母(こちらも作家の藤原てい)と
著者がどのように過ごしていたのか、
藤原家内の様子を綴っていた箇所が面白かったですね。
新田次郎氏は公務員(気象庁勤務)と作家を兼務しており、
夕食後はすぐに書斎に籠もって文章を書いていたそうです。
公務員だからといって仕事は怠けていた訳ではなく、
確か「プロジェクトX」でも取り上げられていた、
富士山の測候所にレーダーを設置するプロジェクトの
責任者でもあったそうですね。
仕事はしっかりこなして、その上で小説も書く、
まさに二足のわらじを履き続けたって感じですね。
そんな新田氏の仕事ぶりの様子が印象的でした。
そういえば、今年の芥川賞の受賞者は
旅行代理店に勤めるOLさんでしたよね。
また、著者の「品格」を形作った面においては、
普通の家とは少し違った、この父親の影響が
大きかったのではないかな、という感も受けました。
自分が書いた著書が作家の父に認められた瞬間とか、
同じ業を生業にしている親子ならではの記述ってところですね。

  • 小学生の英語必修が不要な理由は‥

その他、上述の「国家の品格」に重なりそうな箇所である
「小学生からの英語教育は不要」などの
祖国愛に関する記述もありました。
とはいえ単なる右翼的な考え方ではなく、
「日本人が英語教育に一生懸命な理由は、
一度も植民地になった経験が無いため、
英語が根付いていない&植民地時代の
アレルギーが無いからだ」という理由を
示しているところはなるほどな、と思いました。
このあたりの発想に辿り着く過程が、
先日書評を書いた大前研一さん曰く
「質問する力」なのでしょうね。
単に「英語よりもまずは母国語の日本語を
しっかりと学習すべきだ」という程度の主張では、
マスコミの意見を鵜呑みにしているだけに
なってしまうということでしょうね‥

  • 寄せ集めのため、まとまりを欠くところもありますが‥

エッセイを集めている本のため、
本の終盤は著者が書いた書評が纏められていたりしており、
本の流れとしては、一体感を欠いてしまう面はあります。
編集に著者が関わっていなかった?からでしょうけど、
数学者の著者にしては、論理性に欠ける構成ですよね(^^;)
でも日本の自然の美に思いをはせて
祖国愛について記述しているところなど、
読んでいて面白く、納得させられる内容でした。
ベストセラーになった理由は、中国の反日運動等に
影響された、反韓・反中の流れが大きそうですけど、
この本を読んでみて、「国家の品格」のほうも、
今更ながら読んでみたくなったという感じがしました。