「巨人軍論 ――組織とは、人間とは、伝統とは」(はてな年間100冊読書クラブ 14/100)

巨人軍論 ――組織とは、人間とは、伝統とは (角川oneテーマ21)

巨人軍論 ――組織とは、人間とは、伝統とは (角川oneテーマ21)

  • 「V9」時代の巨人軍が理想の球団

現・楽天イーグルスの監督・野村克也氏の手による本ですね。
タイトルは「巨人軍論」となっていますけど、
現在の低迷した(笑)巨人軍を揶揄するような
通り一遍の内容ではなかったですね。
野村氏が現役時代にライバルとして立ち塞がった
V9時代の「常勝」巨人軍を取り上げており、
その時代の巨人軍は選手の能力はもちろん
先取性などにおいても卓越していたとしています。
本の中に書かれていた例では、
パ・リーグ南海ホークスに在籍していた野村氏と
セ・リーグの巨人軍が対戦する機会は、
交流試合の無い当時では日本シリーズくらいしか
ありませんでした。不人気のパ・リーグ
脚光を浴びる事が少ない南海、そして野村氏は
シリーズに出られるだけで舞い上がっていました。
常にマスコミに取り上げられていた
「常勝」巨人軍の選手達には
そんなうわついた姿勢は見られなかった、
といった記述からすると
「悔しいけど巨人には適わない」現役時代の野村氏は、
そんな心境だったのかもしれないですね。

野村氏は「V9巨人軍」、そしてその時代の
川上哲治監督を理想としていますね。
野村氏が現役時代の南海の鶴岡一人監督や
野村氏が自ら引き合いに出す(笑)長嶋茂雄監督、
あるいは悲運の名将・西本幸雄監督などを例に取り上げて
川上監督を絶賛しています。
野村氏自身も、川上監督にお褒めの言葉を貰って
嬉しかった、といったエピソードもありますね。
当時の巨人軍は、大リーグ・ドジャーズの手法を
取り入れるなど、パイオニアでもあり
(例えば投手のローテーション制など)
「チーム全体の」が「俺達こそが
日本のプロ野球をリードするんだ」
という士気があったと野村氏は書いています。

  • 「巨人軍」だけではなく「日本プロ野球」にも踏み込んで

このあたりは、野村氏による「理想の球団論」
「日本プロ野球論」とも言えますよね。
それを具現化していたのが、
V9時代の巨人軍、ということでしょうか。
野村監督が実践している「ID野球」も
目指すは川上監督の野球なんでしょうね。
もっとも、現在の巨人軍は
過去の巨人軍とはもはや別物(笑)という感じで、
バッサリ切り捨てていますけど(笑)
巨人軍についての内容だけではなく、
プロ野球において「勝つためにはどうあるべきか」
というところが理解できて、面白かったです。