「日中関係 戦後から新時代へ」(はてな年間100冊読書クラブ 142/100)

日中関係―戦後から新時代へ (岩波新書 新赤版 (1021))

日中関係―戦後から新時代へ (岩波新書 新赤版 (1021))

  • 中国側が首相の靖国参拝に噛み付いてくる理由は‥

靖国参拝反対や反日デモ等で
悪化傾向に歯止めがかからない日中関係ですが、
この本は現代の中国研究を主としている著者による
戦後の日中関係を分析した本ですね。
中国側が日本の首相の靖国神社参拝に反対する理由は、
中国が戦前の日本を「一部の軍国主義者と
被害者である一般国民に二分するのを基本としてきた」
からこそ、A級戦犯が祀られている靖国参拝
執拗に噛み付いてくるんですね。
なるほど中国側の論理はこれだったのか、
目から鱗が取れた思いでした。
まぁそれが正しいか否かは別物ですけど(笑)
このことなど、中国側の政策決定の様子が
よく理解できたかなって感じです。

その他、中国側が戦後にこだわる理由として、
日中国交正常化のプロセスを、毛沢東周恩来
トップが2人が独断で決め、進めたということをあげています。
その中には日本への賠償請求の放棄もありますし、
毛沢東はその後文化大革命でその功績を
いわば否定されたような格好ですから、
毛沢東が決断したことへの不満(国民どころか、
共産党の幹部層にも知らされていなかった)
が出ていると分析しています。その後、日本は
賠償放棄の代わりに円借款を行いますが
中国側には思ったほど感謝されてはいない、
というのは周知の事実って感じですよね。。。

  • 戦後の日中史が一望できました

この本を読んで、中国側の論理が(それが正しいか否かは別ですが)
結構見えてきたかなって感じですね。
日中関係を理解する上で、欠かせない一冊だったと思いました。
また、中国共産党本部のいわゆる「大本営発表」だけではなく、
中国の学者の多種多様な意見(一概に反日だけではない)も
記載されており、なかなか興味深かったです。
サンフランシスコ講和条約で日本は台湾の中華民国と国交を回復し、
大陸の中国と断絶して以降、日本・アメリカと中国との国交回復、
そして天安門事件など、戦後の日中史を良くまとめ上げてある
本だなって感じがしました。