「馬を走らせる」 (はてな年間100冊読書クラブ 123/100)

馬を走らせる (光文社新書)

馬を走らせる (光文社新書)

  • 「名騎手、名調教師にあらず」ではない小島太調教師

著者の小島太調教師といえば、
ジョッキーとしても千勝以上をあげた名騎手であり、
(個人的には「名騎手」とするのは、
少々疑問を感じてもいますけど‥笑)
そして調教師としても最高峰の
G1レースを制すなどしており、スポーツ界の定説ともいえる
「名選手、名監督にあらず」という格言を覆していますね。
本書は、その小島太調教師が始めて著した本になります。
小島師は、その騎手時代はエリートというよりは
むしろ一匹狼的な存在であっただけに、
調教師としても個性的な論理を展開しているのかな?(笑)
と思っていたのですが、大体的には普遍的な、
まともな内容に仕上がっていましたね(^^;)
少し意外な感じがしてしまいました。
個性的な騎手で個性的な調教師、というと
田原成貴元騎手が思い浮かびます。
田原元騎手は道を踏み外してしまいましたけど、
同じく個性的な小島師ですが、田原元騎手とは違い、
調教師としての王道を歩んでいるような感じがしますね。

  • 厩舎経営のポイントはコミュニケーション

「厩舎をまとめる調教師として、厩舎で働く厩務員達や
馬主さん・牧場とのコミュニケーションを大切にする。」
など、一匹狼的な騎手時代とは違って、
随分丸くなったというか、人付き合いを大切にしているな、
という印象を受けました。なるほど、このように
コミュニケーションを大事にしているからこそ、
馬主さん達からの信頼も受けて
良い馬を預けて貰える、という感じなのでしょうね。
これが厩舎経営の基本、ってところでしょうか。
調教師としての小島太厩舎の好成績の
理由の一端が窺えたような、そんな感じがしました。

  • 人付き合いが少なかったと思われる現役時代から一転して‥

小島師は、現役時代は、義父の境勝太郎調教師、
及び馬主ではさくらコマースの専属騎手といった
感がありましたけど、調教師になった後は
一転して専属ではなくて全方位外交に切り替えた、
というところでしょうか。若い頃はずっと
専属騎手的な立場で、各厩舎・馬主への営業活動も
しなくて良かった立場であったのに対して、
四十代後半で騎手を引退して調教師となった後に、
今更ながら人付き合いに精を出す、ということは、
なかなか大変ではなかったかと思います。
そのあたりの苦労話等は、
この本には書かれていませんでしたけど。
あと、G1ホース・マンハッタンカフェの能力を見抜いた
小島師の選馬眼などは、若い頃から競馬とずっと
関わってきたところから、養われたものだと思いますね。