「華岡青洲の妻」 (はてな年間100冊読書クラブ 121/100)

華岡青洲の妻 (新潮文庫)

華岡青洲の妻 (新潮文庫)

  • 夫の研究に体を差し出す、妻と姑の物語

日本で最初に乳がんの手術を成功させた華岡青州ですが、
その裏には自ら「人体実験」としてその体を差し出した
妻と姑の存在があった‥という感じのストーリーでしたね。
随分昔の小説で、私は今回始めて読みましたが、
扱っているテーマは現在でも有り得る「嫁姑問題」
ということで、今現在読んでも
全く色褪せない内容になっていますね‥(^^;)
「夫の研究のために、自らの命を差し出すことも厭わない嫁」
という事実に注目すると美談に思えますけど、
この小説では妻と姑がお互いに激しく対抗意識を
むき出しにして「献身」しているため、
読み進めるに従って、お互いの醜さも窺えたりして
必ずしも美談には思えなくなってしまったりしますね‥(^^;)

  • 「憧れの姑」から「夫を巡るライバル」へ、その落差が印象的です‥

加えて、序盤では、「もともと妻は姑の姿に憧れていた」
という設定を用意してあります。
そのため姑に憧れていた妻、そしてその姑から
「ぜひ息子の嫁に」と見込まれて有頂天になっていた
妻の姿と、結婚後「憧れだった筈の姑」と、
お互いライバル意識をむき出しにしている姿、
その対比が印象的でもありますね。
人体実験は最終的には成功して、青州は麻酔薬を完成させますが、
副作用で妻は最後には盲目になってしまいます‥
しかし妻は夫を恨むことなく、
むしろ「自分のほうが夫の研究の役に立った、姑に勝った」
という心境に達しているのが、凄いって感じですな‥(^^;)
私がもしこの妻の立場だったら、
とても夫のためにそこまでの行動は取れないだろうな、
と思ってしまいました(笑)