「日本共産党」 (はてな年間100冊読書クラブ 102/100)

日本共産党 (新潮新書)

日本共産党 (新潮新書)

  • 「たしかな野党」共産党の内情は‥

与党の自民党と野党を代表する民主党
両党の間の政策や主義主張に差が少なくなってきている中で、
日本共産党は「たしかな野党」を標榜して、
昔からある意味一本筋を通してきていますよね。
(その分、妥協する姿勢が無いともいえますが)
その日本共産党で元幹部の職にあった筆坂秀世氏の手による、
共産党の内部の暴露本、といった感じの内容ですね。

派閥間の抗争などがマスコミでも取り上げられる
自民党とは違い、共産党の内部は、秘密のベールに覆われている、
といった感じがあります。そんな共産党の活動内容を
知る事が出来て、なかなか面白かったですね。
(まぁ私自身は共産党の支持者ではありませんが‥笑)
共産党は「政治献金政党助成金を受け取らない」
という方針を貫いており、それはそれで立派な姿勢だとは思いますが、
その代わり活動資金として、機関紙「赤旗」の部数拡大に
党員は必死にならざるを得ないという感じだそうですね。
とはいえ、積極的に拡販活動をすれば、
「あの人は共産党員である」と周りに知られてしまうため、
党員としてはなかなか積極的にはなり辛いようです。
そして、「赤旗」の発行部数が伸びないために、
党員に対する給与の支払の遅延、などもあるようですね。

また、指導部の中央集権・独裁体制も強力であり、
不破哲三氏も前議長の宮本顕治氏に
引導を渡すのに苦労したりとか、
あるいはその不破氏が逆に志位和夫氏(現委員長)を
いびっている(笑)様子なども描かれていますね。
最高指導者の権力が強力な点は、
社会主義体制の北朝鮮や中国の国家体制に
通じるところがありますな。
本来であれば、社会主義は身分の差はなく全員平等、
といった考え方の筈なのですが‥
そして、党指導部の選出も、党員による
純粋な投票ではなく、出来レースのようです。
こういう体制では、共産党内(党員)からの支持すら
覚束ないと思います。ましてや一般の国民からの支持なんて‥
という感じですね。

  • 閉塞的な組織活動に陥っている、共産党

そして「革新政党」の筈の日本共産党が、
上記のように強力な中央集権的な組織であること、
また、共産党はここ最近の各種選挙では、
退潮傾向が鮮明なのですが、その選挙の総括では、
上向きになった項目を無理矢理にを探し出して、
指導部が自ら空虚とも思われる、
「自己満足」的な結論を出して総括を行うなど、
(例えば、得票率が下がって議席が減った時でも、
「(得票率は下がったものの、高投票率により総得票数は上がった
=主張は受入れられた」と総括する。)
共産党が閉塞的な組織活動に
陥ってしまっていることは事実のようですね。

  • 今のままでは衰退は避けられなさそう‥

その中で、面白いエピソードとしては、指導部は
外国の来賓が出席するパーティに招待され、出席したりしますが
不破委員長自身は言葉が通じないため、
来賓と会話もままならない状況です。
その状態を「沈黙の外交によって成果を挙げた」
と党員たちに報告しているところとかは、苦笑モノですね(^^;)
末端の党員達も「赤旗」の拡販等で疲弊してしまい、
脱党者が相次ぐ状況にあって、
「今のままでは共産党の衰退は避けられないだろうな」
そんな感じがしてしまいました。党勢の回復には、
中央独裁体制の刷新や、マニフェストの見直しなど、
抜本的な改革が必要のようですね。