「プロジェクトX 挑戦者たち〈30〉地上の星たちよ永遠に」 (はてな年間100冊読書クラブ 92/100)

TV番組「プロジェクトX」シリーズの単行本も
これが最後になりますね。
テレビ放送を見ることも多かったのですが、
こうして放送後暫く経った後に、改めて本で読んでみて、
もう一度感動を新たにすることも多かったです。
最後の6件のエピソードは、最近北海道の人気スポットになっている
旭川旭山動物園の復活へのドキュメントなどが
取り上げられていますね。

今なお若い女性を中心に人気を博している宝塚歌劇団も、
以前は客席がガラガラだったこともあったそうですね。
そのタカラヅカが、起死回生策として取り上げたのが、
当時池田理代子さんのマンガが人気を集めていた
ベルサイユのばら」だったそうです。
マンガが原作ということもあって、
「生身の人間がやるな」と脅迫もあったりして、
出演者や演出者の方々は苦労したそうですね。
印象に残ったのは、舞台俳優の名優・長谷川一夫さんが
宝塚の女優達に、舞台における立ち振る舞いを
指導した場面ですね。同じ舞台女優の宝塚の女優さん達も
目から鱗が落ちる思いだったそうですね。
さすがは名優&歌舞伎の伝統技って感じでしょうか。
しかし、阪急グループの創業者・小林一三さんの遺言として、
「宝塚と阪急ブレーブスは手放すな」とあったそうですけど、
阪急はブレーブスのほうは手放してしまいましたよね‥(^^;)
もっとも、上記の宝塚歌劇団が低迷していた頃は、
両方とも「道楽息子・道楽娘」として
揶揄されたりもしていたそうですけど‥(苦笑)
その阪急グループ、先日の村上ファンドの活躍のお陰で(笑)
阪神タイガースを手に入れましたけどね。

旭山動物園も上記の宝塚と同じく、入園者数が低迷して
閉園の危機にも立たされたそうですね。
そんな中で、飼育係や獣医の方達が、自らのアイディアを元に
「お客さんに楽しんで貰える動物園」を目指してゆきます。
お金を使って豪華な設備をこしらえるとか、
そういう方向に向かうのではなく、
飼育係の方達が「自分たちしか知らない動物達の姿を
お客さんにも知って貰いたい」という思いから
ボランティアガイドをはじめたりします。
上層部やシンクタンクなどが作成した押し付けの案では無くて
動物園で働く方々の手作りの発案から始まったこと、
これが旭山動物園が復活した一つの要因かなって思いました。
ただ、飼育係の方は、「人と話すのが苦手だから、
動物相手の仕事を選んだ」というタイプの方が多いそうです。
そんな方々がお客様の前でボランティアガイドを始めるのは、
さぞ勇気が要ったかと思います。

「国境の長いトンネルを越えると、そこは雪国だった‥」
川端康成の「雪国」でも御馴染みですが、
新潟県群馬県(関東地方=東京)とは、
谷川岳の「高い壁」に阻まれて、
特に冬場は行き来が大変でした。そんな谷川岳に、
関越トンネルを掘り抜いた時のエピソードですね。
谷川岳国定公園に指定されているため、
環境保護のために、重機の乗り入れとかが出来ず、
掘削に苦労した様子が記されています。
あとは、本文中に出て来る、
「壁に阻まれて、どん詰まりだった」と語る
谷川岳山麓新潟県湯沢町の方々の、
トンネル開通に寄せる期待の思いが、印象的でしたね。
トンネルが開通して、冬には都会の若者が
スキーで訪れるようになり、一気に観光地として発展した
湯沢や苗場地方のことを考えると、
トンネルの経済効果は大きいなぁ、と思いました。
津軽海峡青函トンネルなど、東京と北海道間の交通手段が
ほとんど飛行機に取って代わられている
現在の状況下では「無用の長物」呼ばわりもされていますが‥

この他は、JRのICカードの導入や、
太陽電池に関するエピソードが取り上げられていました。
太陽電池にはかなり紙面が割かれており、
京セラの稲盛和夫氏をはじめ、松下電器やシャープの
屈指の技術者達が心血を注いで取り組んできた様が
描かれていました。ただ、その技術的な面の記述は、
純文系な私にとっては、なかなか理解が難しかったところですね‥
ICカードについては、日本では電波法の規制により、
読取装置に「かざす」だけでは、
上手く機能しないことがあるため、
(例えば香港では、カードから電波を多く出せるため、
「かざす」だけで、問題なく機能するそうです。)
やむなく「触れてもらう」ようにして、
機械の誤作動を防ぐようにしたそうです。
しかし、関東地方では関西地方に比べて、
鉄道の自動改札機の普及は遅かったですけど、
自動改札機の導入前から、ICカードの研究が
続けられていたとは思わなかったです。
これもまた難産だったんですね‥改めて実感しました。