「ある愛の詩」 (はてな年間100冊読書クラブ 85/100)

ある愛の詩

ある愛の詩

  • なかなか良かったラブストーリーでした

先日「天使がいた三十日」を読んで(感想は↓)、
http://d.hatena.ne.jp/yukino77/20060621/p3
こちらはラストが読めてしまうオーソドックスな展開に
もう一つ物足りなさを感じてしまった、新堂冬樹さんの作品ですが、
懲りずにまた読んでしまいました‥(^^;)
結論から言うと、こちらはなかなか面白かったと思います。
ラブストーリーモノでも、新堂さんは「忘れ雪」のような
救われないエンディングを描いた経験もあるため、
油断は出来ないって感じでしたけど(笑)
この「ある愛の詩」はそういうことも無かったですね。
ストーリーとしては、母親に捨てられた過去を持ち、
恋愛に臆病になっている主人公の流香が、
旅行先の小笠原で純粋無垢な青年・拓海と出会い、
裏表の無い拓海に徐々にひかれていく‥という感じですね。

  • 現代の秘境・小笠原が舞台であれば、純真無垢な主人公という設定もOK?

しかし、小笠原が舞台というのは、
個人的には思いっきり反則って感じです(^^;)
丸一日かかる船しか交通機関が無く、
加えて船はほぼ5日間に一度のペースでしか運航されないため、
旅行に行こうとしたら一週間かかる事を余儀なくされる
小笠原諸島、私も一度は行きたいと思っていますけど、
なかなか難しいんですよね。そんな秘境ともいえる
小笠原を舞台にしているからこそ、
今時あり得ない純真な青年を設定したとしても、
違和感無く受け入れられてしまいますから‥(^^;)

  • 愛を信じられないと、恋愛にも臆病に‥

そんな二人の恋愛模様なのですが、
拓海のほうはそういった性格という設定上、
行動や思考には裏表は無いため、
複雑な家庭で育った流香の一人相撲みたいな感じで(笑)
ストーリーは進んでいきますね。
「母親に捨てられて愛を信じられない」という設定の流香が、
拓海からストレートに「好きだ」と言われて
うろたえてしまうシーンとか。
あとは、外国へ留学しようとする流香のために
拓海はアルバイトをしてお金を稼ごうとするのですが
(それがホストで、すぐ売れっ子になってしまうというのは
ちょっと設定がどうかと思いますけど‥(^^;)
その関係で他の女性と一緒にいるところを流香が見て、
拓海を信用出来なくなってしまう場面などが、
一人相撲的なところかな、という感じでした。

  • 「恋は理屈ではない」って感じですな

設定として、流香の音楽学校の先輩で、
ひたすら流香が振り向いてくれるのを待っている
間宮という人物を置いたのは、上手かったカナと思います。
間宮はけなげに一途に流香を愛し続けており、
その間宮に身を任せれば楽なのに‥という感じですが、
愛を信じられない流香はその気になれません。
しかし、突然目の前に現れた拓海に
どうしようもなく引かれていってしまう‥
このあたりは、「恋は理屈ではない」というところを
上手く見せているって感じですよね。
まぁ待ち続けても報われない間宮の思いも、
また悲惨って感じなのですが‥(^^;)

  • 父親も悔い改め、終わり良ければ全てよし

娘・流香の留学費用を「出す」と言っておきながら、
本人に全くその気は無く、結果お金を出さないことによって
留学を止めさせようとする流香の父親は
汚いって感じなのですが(この策の結果、
流香の留学費用を稼ごうとして、拓海がバイトを始めて、
二人の仲がおかしくなったこともありますし)
ただその父親も最後は悔い改めており、
流香と拓海も最後は無事結ばれて、
結果見事なハッピーエンドになっていますね。
今回は後味が悪く無くて良かったです‥(^^;)