「王の挽歌〈上巻〉」(はてな年間100冊読書クラブ 50/100)

王の挽歌〈上巻〉 (新潮文庫)

王の挽歌〈上巻〉 (新潮文庫)

戦国時代に北九州に覇を称えたキリシタン大名
大友宗麟を主人公に据えた、遠藤周作さんの歴史小説ですね。
遠藤周作さんとキリスト教といえば、
キリスト教を棄教するか否かで揺れ動いた宣教師を
主人公としてを扱った、小説「沈黙」が余りにも有名ですよね。
「沈黙」は、「○○文庫の夏の100冊」等のキャンペーンでも
良く取り上げられている、現代小説の名作、という感じですね。
この小説の主人公の大友宗麟も、キリスト教の信教と
統治者としての家臣団の融和との狭間で
悩みぬいていた人物として描かれていますね。
「沈黙」に通ずるところがある小説ですね。

  • 宗麟は家督を楽に継げた訳ではなく‥

大友宗麟といえば、私にとっては上記の通り
一時期は北九州に覇を称え、戦乱に明け暮れた
猛将系の戦国大名、というイメージが今までは強かったです。
しかしその母は、地元とは縁の無い中国地方の大内氏の出身、
そして、大内氏と大友氏がしばしば交戦していたことから、
宗麟の後継ぎとしての立場は、安定していたとは
必ずしも言えなかったようですね。
幼少の頃は宗麟の父の側室(義母=異母弟あり)に疎まれ、
また宗麟が大名となったきっかけが、
お守役が父親を殺害しようと謀り、
結果父が死亡したため、ということもあって、
宗麟自身は次第に人間不信状態に陥っていたようです。
お殿様も志村けんのバカ殿様とは違って、
楽ではない、といった感じでしょうか。

  • キリスト教に傾倒したいと思いつつも、領国経営を考えると‥

そんな中で、禅にも心の安らぎを見つけられなかった宗麟ですが、
最初は国益を図ることを目的にしていた
キリスト教の布教について、謁見したフランシスコ・ザビエル
姿が印象に残り、キリスト教に傾倒していく姿勢を見せます。
しかし、もともと気性の荒い宗麟の妻が神社の娘であること、
及び各家来衆からの反発等も予想されて、宗麟自身は
なかなか信者となることには踏み切れなかったですね。
こうしている間に、中国地方では縁戚の大内氏が滅ぼされて
毛利元就が台頭し、九州侵入を試みて宗麟もピンチに陥ります。
しかし、かねてから将軍家に献金していたお陰で得た
九州探題」の称号もあって兵を動員出来たため、
毛利や毛利に呼応した、肥前龍造寺隆信らを
追い払うことに成功した、という所までが上巻のストーリーでした。