「プロジェクトX挑戦者たち〈29〉曙光 激闘の果てに」(はてな年間100冊読書クラブ 38/100)

プロジェクトX」もテレビ番組は終了してしまい、
本のほうもあと少しって感じですね。テレビで見た後に
本を読んでもう一度振り返ると、改めて印象深かったのですが、
もう今後はこれが出来ないかと思うと、残念な気もしてしまいます。

今回の29巻は、「名古屋城の再建」などが取り上げられていましたね。
私も名古屋人なので、名古屋城は非常に身近なのですが
(私の家からも、名古屋城が見えます。)
その再建にあたっては、当時は寄付など
名古屋の庶民の間の機運も盛り上がっていたそうですね。
今の名古屋の、どこか醒めたような雰囲気からは想像出来ない
ですが‥(笑)
また、名古屋城の再建を引き受けた間組は、
「地元民のために」採算度外視で仕事を引き受けたそうですね。
当時の社長の男意気にちょっと感動したりもしました。
今の世の中では、採算度外視で仕事を引き受けたりすれば、
株主代表訴訟などで訴えられないですからなぁ‥(^^;)

また、金のシャチホコの再作成にあたっては、
創建当時のシャチホコに比べて金の使用量が抑えられたため、
そこを大阪造幣局の職人が、腕でカバーしたそうですね(笑)
東大寺の大仏殿がその消失→再建にあたって、
次第に規模が小さくなったのは有名ですけど、
名古屋城金のシャチホコも、やっぱ縮小再生だったんですね(^^;)
あとは、石垣自体が文化財指定されていたため、
石垣を壊さずにその上にコンクリート製の天守閣を建設するのに
苦労したそうです。なるほど、文化財の保存や修復は
ほんまに色々な苦労があるんだなぁ‥と改めて実感しました。

ほかに印象に残ったエピソードとしては、
クロマグロの完全養殖のストーリーですね。
マグロはほかの魚と比べて養殖が難しく、
加えて生き物が相手のため、養殖が実現するためには
非常に苦労したそうです。養殖中には台風の襲来があったり、
車のヘッドライトに驚いてマグロが金網に激突して
死んでしまったりと、色々なハプニングがあったそうですね。
それもヘッドライトが原因だとはすぐには解らないですから‥
今まで私は、冷凍モノのマグロは水っぽさが抜けずに
不味いな〜と思っていましたけど、
もう少し感謝して食べないといけないのかもしれないですね。
(まぁ、冷凍モノのマグロは海外で獲れたもので、
養殖ではないと思いますが‥(^^;)

そして、この「プロジェクトX」の主題歌・「地上の星」を
中島みゆきさんが紅白歌合戦で歌ったことでも話題になった
黒部ダムの建設も、読み応えありましたね。
恐るべき巨大な規模、そして苛酷な環境‥
まさに日本人の底力で作り上げた、
といっても過言ではないと思います。
しかし、地上の空を見ることなく延々とトンネルを掘り続け、
加えて崩落の危険もあるとなると、
これは最悪の3K労働環境って感じですよね。
私にはとても続けられないって思います‥(^^;)
私は佐渡島に行ったときに、佐渡金山の採掘の様子を
再現したものを見ましたけど、やはり空気・環境は悪く、
多くの人が早死にしたそうです‥
やっぱ地下は環境が悪いですからね‥

  • それでも成し遂げた、日本人の叡智

そんな中で「破砕帯(崩れやすいところ)」を
崩落の危険にもめげずに掘り切ったのは凄いと思います。
立山黒部アルペンルートの、トンネルを走るトロリーバスの運賃は
非常に高いのですが(苦笑)、まぁこういう苦労を知ってしまうと、
多少運賃が高いのもやむを得ないのかな、と思ってしまいますね。
また、建設途中には、融資をして貰っていた世界銀行から、
規模の縮小を求められたものの、それを押し切ったこともあったそうです。
この他には、北海道の池田町で、ワインを生産できるように
なるまでの苦心談などが収録されていました。