「忘れ雪」(はてな年間100冊読書クラブ 34/100)

忘れ雪

忘れ雪

  • 序章の淡い初恋模様から一転、終盤はサスペンチックに‥

序章は、家庭環境が複雑な小学生の女の子の
淡い初恋の模様を描いており、せつないラブストーリーに
なるかと思われたのですが、終盤は一変してサスペンチックに
なってしまいましたね。最後までラブストーリーのままだったほうが
個人的には良かったな、という感じがしました。
上記の序章で小学生の橘深雪と高校生だった桜木一希は
それぞれ大学生と社会人になっています。
嘗て7年前に交わした約束を、深雪のほうは覚えていたものの、
一希のほうはすっかり忘れてしまっていた、という設定は、
最終的には悲恋に終わってしまう、伏線だったのかもしれないですね。

  • 三者視点で感情移入がし辛く‥

しかし、この小説は一部の箇所を除いて
三者的な視点で書かれているため、
感情移入はし辛かった面もありますね。
これはラブストーリーとしては、マイナスではないでしょうか?
例えば主人公(一希)については、「私」や「僕」ではなく、
「桜木は‥」と苗字で書かれていますし、
かといってもう一人の主人公・深雪視点でもありませんから。
まぁ、第三者視点にしたのは、リアルさから離れた
後半のサスペンス部分を意識したためかもしれませんが‥
また、表現も全体的にかなりくどいかな、と思います。

  • 恋に鈍感すぎる主人公の‥自業自得なのカナ?(^^;)

また、主人公の桜木の、あまりに恋に鈍感な様子は
いかがなものかと思います。
「お前、そんなんではあかんやろ」と読んでいる途中で
桜木の親友の鳴海ならずとも
突っ込みたくなる気分になりましたね‥(^^;)
そんな桜木は、過去出会っていたことを思い出す前から
深雪に一目惚れ状態になってしまうのですが、
そんな桜木に片想いしている女性(静香)が嫉妬して
中盤以降暗躍し始めます。
そして最後は深雪を殺そうとして、
深雪を庇おうとした桜木自身が犠牲に‥という展開でしたね。
恋に鈍感な桜木はともかく(笑)、深雪は家庭環境的にも
不幸な状態が続いていたこともあり、
彼女は幸せにしてあげたかったな、と思いました。
(まぁラストでは、桜木の死についての
気持ちの整理は出来ていたようですが‥)