「キヤノン高収益復活の秘密」(はてな年間100冊読書クラブ 66/50)

キヤノン高収益復活の秘密

キヤノン高収益復活の秘密

社長の御手洗冨士夫氏が次期経団連会長に内定するなど、
躍進を続けるキヤノンについて書かれた本ですね。
最近は成果主義社外取締役執行役員など、
アメリカ流の経営手法が日本企業にも盛んに取り上げられていますが、
そんな中でキヤノンは、「終身雇用」の維持を標榜しており、
他企業とは一線を画している感じがしますね。
「利益は、株主・会社・従業員で三等分する」という考え方も持っており、
「業績向上という成果にきちんと応える」という点で、
他企業とは違い、従業員の士気が高くなっていそうですね。
しかし、必ずしも「日本流経営」に拘るのではなく、
実力主義の徹底」や「SCM(サプライチェーンマネジメント)」など、
米国流の経営手法も取り入れてはいます。
バブル経済の崩壊で日本企業は低迷を余儀なくされ、
「終身雇用」などの日本流の経営手法が多くの企業で
見捨てられつつありますが、キヤノンの場合は
「日本流のOS(終身雇用)は維持しつつ、実力主義など欧米流の
経営手法も取り入れて行く」という姿勢をとっているようですね。
私の勤めている会社でも、キヤノンベンチマークとして
取り上げられていますが、この本を読む限りでは
追いつくどころか、影さえ踏めないだろうな、と実感しました(笑)

現社長の御手洗冨士夫氏は、
いち早くキャッシュフロー経営を取り入れて、
全社に展開したことにより、業績を急向上させたそうですね。
損益計算書」中心ではなく、実際のお金の流出入を示す
キャッシュフロー」を重要視することにより、
経営の効率化や、有利子負債(借金)の返済に
大いに効果があったそうです。
例えば、「損益計算書」の場合は、固定資産を購入した場合は
費用は減価償却費として何年かに分けて計上されますけど、
キャッシュフロー計算書」上では、
キャッシュは固定資産の購入時に全額支出、
という感じになりますから、よりシビアに計算されますよね。
御手洗社長は創業者一族出身ではありますけど、
創業者の直系ではなく(甥)、
従兄弟の急死により急遽社長を継いだとのことです。
若い頃はまだ販売基盤の整っていなかった米国に飛ばされて、
カメラの販売に苦戦したりもしたそうですね。
アメリカ経験の長い御手洗社長が、アメリカ的経営手法を
盲目に取り入れていないところは、面白いと思います。
それだけ、アメリカ的経営手法の良し悪しが理解できている、
ということなのでしょうね。