「ドキュメント 死刑囚」(はてな年間100冊読書クラブ 1/100)

ドキュメント死刑囚 (ちくま新書)

ドキュメント死刑囚 (ちくま新書)

  • 凶悪犯の生の声が収録、貴重な内容ですね

著者は、雑誌「創」の編集長ですね。
その著者が、非力な子供を襲った凶悪犯の3人と
拘置所で直接会い、また文通などを通して
彼らと交流した結果をまとめています。
凶悪犯の3人は、幼女連続殺人の宮崎勤
大阪池田小学校事件の宅間守
奈良幼女殺人の小林薫、いずれもその凶悪性・残虐性が
世間に衝撃を巻き起こした事件の犯人ですね。
衝撃的な事件であるだけに、
事件後そして裁判の過程でも
マスコミでも取り上げられる機会は多かったのですが、
やっぱ「マスコミというフィルターを通した」
歪んだ情報ではないかという思いもあります。
この本では、彼らと直接面会し、また文通によって
直接彼らの本音が聞くことが出来ており、
貴重な内容に仕上がっていますね。
「死刑囚の本音」、なかなかお目にかかることは
出来ないですから‥

宮崎勤は、法廷でも居眠りするなど、
逮捕から死刑執行までずっと、ちょっと変わった
「夢の中の住人」であったような感じですね。
その宮崎との接見・交流の様子では、
亡くなった祖父に対する異常なまでの執着と
(これが残虐な犯罪・行為に繋がった‥?)
両親に対する敵意の異常さが、窺えますね。
これが、精神的に病んでいる、
ということでしょうか‥?
素人では判断が難しいところです‥
また、宮崎の供述の記載内容は、
文章として眺めてみても、
残虐な行為に至った過程など
一般人には意味等が不明な、
独特の宮崎ワールドが展開されていますね‥
まぁ、犯行の過程で遺骨をくわえたなど、
宮崎の行動自体も異常なのですが‥
その宮崎の精神鑑定において、
複数の医者の意見が分かれた、
というのは納得させられる感があります。

  • 「家庭環境の悪さにより、犯罪への道へ‥」小林薫

宮崎に比べると、小林と宅間の接見記録は
割と解りやすいですね。
歪んでいるとはいえ、宮崎のような
全く理解出来ないような、違和感がありません。
小林薫は、幼少の頃に母が死去したこと、
そして残された父親との関係が上手くいかずに、
転落への道を辿ってしまった事が窺えます。
小林は罪の意識が低く、
万引きや性犯罪などを繰り返した挙句
遂に大事件を起こしてしまった‥という感じですね。
高校に通うためのアルバイト費用などを
父親に取り上げられてしまったことなど、
一部に同情すべき面もありますけど‥
法廷で被害者の両親の悲痛な叫びを聞き、
家庭愛に飢えていた自分との境遇の差を実感しながら
小林は死刑を希望します‥
小林は一時、「自ら積極的に少女を殺害したのではなく、
睡眠薬を飲ませたら溺れ死んでしまった」
と主張していたそうですが、
さて真相はどうだったのでしょうか‥

取り上げられた3人の中で、
一番歪んでいると思われるのは、
最後に取り上げられている宅間守でしょうね。
宅間は公判中でも反省の心を全く見せず、
社会に対する敵意をむき出しにしています。
攻撃されたらすぐさま反撃、という姿勢ですね。
この宅間のとてつもない絶望感、
底知れぬ心の闇は、震撼させられるものがありますね‥
最近でも、秋葉原などの大量殺人事件が
あったことは記憶に新しいところです。
宅間のような、心に闇を抱えた人間が、
更に増えていることが、実感させられます‥
しかし、そんな宅間に共感した女性がいて、
宅間は獄中結婚していますね。
さすがの宅間も、彼女の無償の奉仕には
心を動かされたりもしていたようですが‥
しかし、世の中には色々な価値観の人がいるものですな。
宅間しかり、宅間と結婚した女性しかり‥
ただ、やっぱ死刑となるような
凶悪かつ重大な犯罪を起こした犯人だけあって、
彼らの精神構造は、理解出来ないものがあるなぁ‥
と改めて実感させられました。

  • 死刑の抑止効果も、最近は疑問視‥?

死刑は残虐な刑罰だとして、
最近は廃止が叫ばれています。
一方で死刑存続派の意見として、
死刑には犯罪への抑止力があるのではないかと
言われていました。しかし最近では、
宅間守のように「死刑覚悟」で破滅的に
凶悪犯罪を起こすケースも出てきました。
抑止力としての効果も、疑問視されるところがありますね。