「ドキュメント 死刑囚」(はてな年間100冊読書クラブ 1/100)
- 作者: 篠田博之
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/08
- メディア: 新書
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- 凶悪犯の生の声が収録、貴重な内容ですね
著者は、雑誌「創」の編集長ですね。
その著者が、非力な子供を襲った凶悪犯の3人と
拘置所で直接会い、また文通などを通して
彼らと交流した結果をまとめています。
凶悪犯の3人は、幼女連続殺人の宮崎勤、
大阪池田小学校事件の宅間守、
奈良幼女殺人の小林薫、いずれもその凶悪性・残虐性が
世間に衝撃を巻き起こした事件の犯人ですね。
衝撃的な事件であるだけに、
事件後そして裁判の過程でも
マスコミでも取り上げられる機会は多かったのですが、
やっぱ「マスコミというフィルターを通した」
歪んだ情報ではないかという思いもあります。
この本では、彼らと直接面会し、また文通によって
直接彼らの本音が聞くことが出来ており、
貴重な内容に仕上がっていますね。
「死刑囚の本音」、なかなかお目にかかることは
出来ないですから‥
- 「夢の中の住人」、宮崎勤
宮崎勤は、法廷でも居眠りするなど、
逮捕から死刑執行までずっと、ちょっと変わった
「夢の中の住人」であったような感じですね。
その宮崎との接見・交流の様子では、
亡くなった祖父に対する異常なまでの執着と
(これが残虐な犯罪・行為に繋がった‥?)
両親に対する敵意の異常さが、窺えますね。
これが、精神的に病んでいる、
ということでしょうか‥?
素人では判断が難しいところです‥
また、宮崎の供述の記載内容は、
文章として眺めてみても、
残虐な行為に至った過程など
一般人には意味等が不明な、
独特の宮崎ワールドが展開されていますね‥
まぁ、犯行の過程で遺骨をくわえたなど、
宮崎の行動自体も異常なのですが‥
その宮崎の精神鑑定において、
複数の医者の意見が分かれた、
というのは納得させられる感があります。
- 「家庭環境の悪さにより、犯罪への道へ‥」小林薫
宮崎に比べると、小林と宅間の接見記録は
割と解りやすいですね。
歪んでいるとはいえ、宮崎のような
全く理解出来ないような、違和感がありません。
小林薫は、幼少の頃に母が死去したこと、
そして残された父親との関係が上手くいかずに、
転落への道を辿ってしまった事が窺えます。
小林は罪の意識が低く、
万引きや性犯罪などを繰り返した挙句
遂に大事件を起こしてしまった‥という感じですね。
高校に通うためのアルバイト費用などを
父親に取り上げられてしまったことなど、
一部に同情すべき面もありますけど‥
法廷で被害者の両親の悲痛な叫びを聞き、
家庭愛に飢えていた自分との境遇の差を実感しながら
小林は死刑を希望します‥
小林は一時、「自ら積極的に少女を殺害したのではなく、
睡眠薬を飲ませたら溺れ死んでしまった」
と主張していたそうですが、
さて真相はどうだったのでしょうか‥
- 「歪みまくり」の宅間守
取り上げられた3人の中で、
一番歪んでいると思われるのは、
最後に取り上げられている宅間守でしょうね。
宅間は公判中でも反省の心を全く見せず、
社会に対する敵意をむき出しにしています。
攻撃されたらすぐさま反撃、という姿勢ですね。
この宅間のとてつもない絶望感、
底知れぬ心の闇は、震撼させられるものがありますね‥
最近でも、秋葉原などの大量殺人事件が
あったことは記憶に新しいところです。
宅間のような、心に闇を抱えた人間が、
更に増えていることが、実感させられます‥
しかし、そんな宅間に共感した女性がいて、
宅間は獄中結婚していますね。
さすがの宅間も、彼女の無償の奉仕には
心を動かされたりもしていたようですが‥
しかし、世の中には色々な価値観の人がいるものですな。
宅間しかり、宅間と結婚した女性しかり‥
ただ、やっぱ死刑となるような
凶悪かつ重大な犯罪を起こした犯人だけあって、
彼らの精神構造は、理解出来ないものがあるなぁ‥
と改めて実感させられました。
- 死刑の抑止効果も、最近は疑問視‥?
死刑は残虐な刑罰だとして、
最近は廃止が叫ばれています。
一方で死刑存続派の意見として、
死刑には犯罪への抑止力があるのではないかと
言われていました。しかし最近では、
宅間守のように「死刑覚悟」で破滅的に
凶悪犯罪を起こすケースも出てきました。
抑止力としての効果も、疑問視されるところがありますね。