「天使がいた三十日」 (はてな年間100冊読書クラブ 76/100)

天使がいた三十日

天使がいた三十日

  • 自堕落な恋人のことが心配で、天国から妻の魂が‥

最愛の妻を亡くして、生きる気力をなくしてしまった男、
その男が家賃を稼ぐために働き始めた時に、
あるお客の家で犬と出会って‥という感じで始まるストーリーですね。
ハッキリとは記されていないのですが、
その犬が主人公に異常に懐くこと、及び(犬なのに)
自堕落な主人公の生活習慣を変えようとすること等から、
この犬に亡き妻(の魂が)乗り移っている、ということは、
読んでいて想像出来てしまいますよね。

  • 二番煎じ的なストーリーだと思ってしまうと、感動ももう一つですが‥

「不慮の事故で先立った人の霊が、残された恋人を心配して
その前に現れる」というパターンは、
映画のラブストーリーの名作、
「ゴースト ニューヨークの幻」を思い出させます。
その二番煎じ的なストーリー、という思いが、
読んでいて否めなかったため、読んでいて泣けるとか、
そういうところはありませんでした‥(^^;)
ただ、そういう先入観を除けば、
内容的には感動出来る、良いストーリーだと思います。
作者の新堂冬樹さんの作品といえば、
以前「忘れ雪」という作品を読みました。(感想は↓)
http://d.hatena.ne.jp/yukino77/20060323/p3
しかしこの作品は、一見ラブストーリーかと思いきや、
途中からサスペンスチックになってしまい、
加えてラストは悲恋という結末が待っている、
というちょっと救われない終わり方をしていました。
それとは違って、今回の「天使がいた三十日」は、
ラストは綺麗にまとめられており、読後感はスッキリしますね。

  • 二度目の別れも、今度は前向きに‥

「ゴースト」と同じく、犬(=妻の魂)は
この世に長くは留まれずに、最愛の妻と
再度別れを経験してしまうことになります。
別れの直前に、犬が主人公(夫)の恩師に引き合わせて、
嘗ての本業の作曲家としての復帰の道が開ける、
というところは、それまでの自堕落な主人公を見ていると
少し都合が良すぎる展開のような気もしてしまいますけど‥(^^;)
そして今度は、夫のほうも落ち込むことは無く、
しっかりと前を向いて歩いていくという、
希望の持てるラストになっていますね。