「明日の記憶」

  • ヒューマンドラマ系の映画に期待して

世間的には今映画といえば、週末に封切られたばかりの
ダ・ヴィンチ・コード」なのでしょうけど、
そんな中で私はこの「明日の記憶」という映画を見て来ました。
「この映画の主演の渡辺謙さん自身が、原作を読んで
ストーリーに感動したという」噂を聞いたこともあって
映画のジャンルでは、最近はヒューマンドラマ系に
ハマっている私としては無視出来なくて‥(^^;)
ただ、若者層は「ダ・ヴィンチ・コード」に流れているようで、
映画館の中は熟年夫婦がほとんどであり、
その中で私の存在は、思いっきり浮いていたような
気がしてしまいました‥(笑)

広告代理店に勤める50歳間際の、
家庭を顧みない仕事人間のサラリーマンが
若年性アルツハイマー病にかかってしまい、
その闘病生活を描いたストーリー、という感じですね。
主人公が医者からアルツハイマーと聞かされた時の絶望感、
そして仕事を支障にきたすことになって退職勧奨、
会社を退職後は、今まで専業主婦をしていた妻が
治療費などの外で働くようになり、
自宅に取り残された主人公は、
妻とすれ違うことも多くなって‥という展開です。

  • 実在する病気をテーマに扱っている、怖さもあって‥

しかし、「若年性アルツハイマー」という
実在する病気をテーマに扱っているため、
ストーリーは非常に現実味が溢れていて
ある意味怖さがありましたね。
「自分も万が一こうなってしまう可能性がある」
という事実について、映画を見ながら
色々考えさせられました。
そして、「若年性アルツハイマー」は、
現在のところ不治の病であり、
進行を和らげることしか出来ないんですよね‥
ただ、若年性アルツハイマーを取り上げた映画としては
昨年公開された韓国映画私の頭の中の消しゴム」がありますね。
個人的には、韓国映画の二番煎じテーマとというのは、
ちょっと気に入らないのですが‥(笑)

  • 不治の病であるという現実は、救われないエンディングへ

不治の病であるというその事実が、
この映画の見ていて救われないエンディング
(=最後は最愛の妻のことさえ忘れてしまう)
を物語っています。アドベンチャーゲームであれば、
進めていくうちにバッドエンドに到達してしまった、
という感じですね。確かに現実であればそうなのでしょうけど、
映画の中であれば、もう少し何とかならなかったものかと思います。
主人公が自分のことを忘れてしまったという事実を知った時の、
妻役の樋口可南子さんの泣き笑いのような表情が
なんとも言えなかったですね‥
私が好きなゲームのシナリオでは、
「起きないから奇跡って言うんですよ」
という言葉が出て来ますが、私にとっては
せめてゲームや映画といったフィクションの世界の中では、
奇跡というか、ハッピーエンドを見ていたいって感じがしますね。
昨年公開された映画「きみに読む物語」では、
アルツハイマーになった妻に対して、
最後は献身的に看護する夫の気持ちが通じて奇跡が起こる、
という展開であり、こちらのほうが私的には好みです。

  • 渡辺謙さんはじめ、演技の達者な俳優さんが揃って‥

映画の内容的には、主人公の渡辺謙さんの演技は
さすがって感じでしたね。
病名を知らされて取り乱す場面は勿論のこと、
会社でメモを抱えてあたふたしている場面や
病状が次第に進行していく様子を、
上手く演じ分けているところは、正直凄いなと思いました。
あと、脇役も妻役の樋口可南子さんをはじめとして、
達者な方々が揃っていましたね。
また、主人公が不安定に陥る様子を、
主人公を中心にして、グルグル回るカメラワークで
表現したところは面白いと思いました。

  • 娘の結婚式と、退職の場面が良かったかな、と思いました。

個人的に良かったシーンは、主人公の娘の結婚式と
退職の場面ですね。結婚式では主人公は
用意しておいた原稿を置き忘れてしまうのですが、
不安に襲われる中で、妻に手を握ってもらって
たどたどしいながらも、アドリブで挨拶をこなします。
それが逆に感情が籠もっていた挨拶になっていましたね。
そして退職のシーンでは、病気の発症によって
閑職に追いやられた末に退職した主人公に対して、
嘗ての部下が見送りに来てくれて、
自分たちのことを忘れないように
手書きのメッセージ入りの写真を手渡して‥という展開でした。
序盤のシーンでは、部下にガミガミ怒鳴るって感じで、
主人公は部下にとって、必ずしも良い上司とは思えなかったのですが、
その部下たちが主人公を慕って、見送ってくれる場面に
見ていて思わずホロリと涙してしまいました‥(^^;)