「自省録」(はてな年間100冊読書クラブ 49/100)

自省録

自省録

  • 「自省録」とはいえ、政治家に未練たっぷりな内容‥(^^;)

中曽根康弘元首相が、自身の政治家としての軌跡を振り返って
著した一冊ですね。タイトルには「自省録」とありますけど、
まず最初は、自身に引退を迫った小泉純一郎首相に対して
痛烈な批判を浴びせていたりします。決して「自省」ではないですな(笑)
読んでいて、まだまだやり残したことがあるというか、
政治家に未練たっぷり、という感じを受けました‥(^^;)

  • 首相としての成果の自慢話も多くて‥

内容的にも、「ロン・ヤス」外交でアメリカとの連携を深めて
旧ソ連を解体に追い込んだりしたことなどを自賛したりしており、
自らの首相としての成果の自慢話が多いかな、という印象を受けました。
「自省」の部分としては、「やることが多すぎて、
文化的な面まで手が回らなかった」という程度でしょうか(笑)
ただ、国鉄電電公社などの民営化を成し遂げたところは
今の小泉内閣における「郵政民営化」や「道路公団民営化」が、
例えば道路公団のほうでは、新路線の建設凍結などが出来ずに
形だけの民営化に終わってしまったことを考えると、
中曽根さんのほうが成果としては上手だな、という感じがしますね。

  • 面白かったのは、自らが関わった有名政治家の分析かな

面白かった箇所としては、中曽根さんが政治家人生の中で
関わった政治家について、取り上げて記した箇所ですね。
保守本流を歩んできた中曽根さんだけあって、
吉田茂さん・佐藤栄作さん・田中角栄さんなどの
過去歴代の総理大臣と直接接触する機会も多かったようで、
彼らに対する所感や分析があります。
吉田茂さんが公職追放になっていた鳩山一郎さんなどの
追放解除に躊躇していたことや(解除後は
鳩山さんは吉田さんのライバルになりましたね)、
田中角栄さんについては「政治的な思想は
全く異なっていたけれど、良きライバルだった」など、
同格の政治家として同じ目線による人物像は、
マスコミが伝える人物像とは一味違って、
なかなか面白かったと思います。

  • 総理大臣になるために、人脈作りに腐心‥

総理大臣の座を巡る有力者たちの思惑や
駆け引きの部分については、その当事者となることが多かった
中曽根さんの手による記述、実に生々しかったですな‥(^^;)
また、中曽根さんは総理大臣になるために、
「党の役職につかずに、人脈を広げることに腐心した」
そうですね。なるほど、総理大臣になるためには
財界のバックアップも必要、ということでしょうか。
普通は党の重職を歴任して総理大臣に、
という流れが王道かと思っていましたけど。