「痛憤の現場を歩く」(はてな年間100冊読書クラブ 21/100)

痛憤の現場を歩く

痛憤の現場を歩く

著者の鎌田慧氏が、色々な事件の現場を歩いて感じた事をまとめて
雑誌「週刊金曜日」に連載した記事を、本にしたものですね。
まぁ「週刊金曜日」の編集方針もあり、「旧国鉄の採用差別」や
「都立高校の君が代強制」を取り上げられたりして、
左翼化傾向の強い内容になっていますね‥(^^;)
ただ、思想面を除けば(笑)現実に発生した事件を扱って、
鎌田氏が現場を訪ねて書いた、リアルなルポルタージュになっていますね。

  • 日雇い労働者の実態

日雇い労働者に関するルポが何本かありました。
しかし彼らの雇用実態(収入の大半をピンハネされ、
現場への「交通費」を借金とされたりして実質監禁状態に置かれる)や、
彼らの集まる山谷での食糧配給の様子を見れば、
「不満は多くとも、退職→再就職出来ず→ホームレスへという流れは避け、
何が何でも会社に踏みとどまらなければ」
という気持ちを強くしてしまいました‥(^^;)
しかし、これらの日雇い労働者が、大手ゼネコンの下請けとして
割安な賃金で働き、ゼネコンの利益に貢献している現実を鑑みれば、
日本の景気回復も、こうした歪んだ実態によって
支えられている、ということが言えると思います。
「新宿の一泊五万円のホテルのそばで、ホームレスが野宿している」
これが小泉流「格差社会」の極限って感じがしますね。
加えて、日本は政治だけではなく、一般人の視線も
ホームレス等には厳しいですからねぇ‥
若者たちが「憂さ晴らし」でホームレスを襲撃する、
という事件も一向に無くならないですし‥

  • 「加害者の受験を考慮して」真相解明の訴えのタイミングを遅らす‥

その他で印象に残った記事では、いじめで自殺した中学生の
両親に取材したものがありました。被害者の両親は、
真相解明を求める訴えを起こしているのですが
この両親は、「加害者の受験勉強を配慮して」それが
終わった時期に訴えを起こしているんですよね‥
自分の子供が殺されたようなものなのに
(被害者は、遺書にいじめた相手を名指しで自殺しています)
いじめの加害者を思いやった態度が出来るところは
凄く感動してしまいました‥「出来た親達だなぁ」と思います。
もっとも、そんな訴えに対して、学校側・そして司法側も
納得の出来るような結果を出してくれないのは、
いかがなものかと苦言を呈しておきたい気分です。

  • 沖縄米軍基地問題、気持ちは解るのですが‥

あとは、沖縄の米軍基地問題を扱ったルポも多かったですね。
ここも左翼化傾向の強い雑誌ならでは、という気もします。
しかし、「基地の負担を沖縄だけに押し付けている」という
認識は私も事実だと思います。
とはいえ、隣国の中国が戦力を増強している現実があれば、
対抗兵力としての米軍の駐留は必要だと思いますし、
「基地の本土移転(自分の住んでいる近くに移転)」
というのは、本土住民として正直かなわんな〜という感じなので(苦笑)
気の毒ですけど現状のまま、沖縄の犠牲の上に
やっていくしかないのかな、という気持ちですね‥
しかし、このルポによれば、「沖縄以外の米軍兵は、比較的温和であり」
とありますけど、先日の横須賀基地の米兵による女性殺害事件など、
最近は沖縄以外の米兵も危なくなってきているような、
そんな感じもしてしまいますね‥