「かっぽん屋」(はてな年間100冊読書クラブ 14/100)

かっぽん屋 (角川文庫)

かっぽん屋 (角川文庫)

  • 重松さん得意のサラリーマン小説&高校生が主人公の青春小

説の詰め合わせ
先日読んだ「ビタミンF」がなかなか面白かったので、
また重松清さんの本を手にとってみました。
今回の「かっぽん屋」も、「ビタミンF」と同じく短編集ですね。
短編が8本収録されており、
4編ずつ「SIDE:A」と「SIDE:B」に分かれています。
「SIDE:B」は「ビタミンF」と同じような
サラリーマン男性が主人公の作品が収録されていますが、
「SIDE:A」のほうは、主に高校生を主人公に据えてあり、
ちょっと甘酸っぱい感じのする青春小説、って感じがしますね(^^;)
事実本の題名になっている「かっぽん」は、
「セックス」の意味ですから(笑)
「SIDE:A」で印象に残ったのは、やっぱ上記の
高校生の性への衝動を赤裸々に綴った(笑)「かっぽん屋」、
そして、同じように小学生の(以下同じ‥笑)「すいか」ですね。
この2作品は、電車の中ではちょっと読めませんな(笑)

  • 恋人のフリは嘘だったのですが、それでも良かったのか‥な?

あと「五月の聖バレンタイン」は、こちらは少しせつない内容でした‥
高校生の姉が交通事故で植物人間状態となり、
その後死亡してしまいます。事故直後から熱心に病院に通い、
そして死後もお参りに来る、彼女の「恋人」の様子は、
両親をはじめ周りからは好意的に見られていますが、
実はその行動は「悲劇の主人公を演じていただけ」だった、
という感じでした。主人公である彼女の弟は
この「恋人」のことが許せずに、遂に真相をぶちまけてしまうのですが、
両親(彼女の親)は、「亡くなった娘も、
好きだった人がお参りに来てくれて幸せだったと思う」
という感じでこの「恋人」の事を受け入れてしまう、
という感じのストーリーでした。
でも、演技で(=心の中で舌を出していて)お見舞い・お参りされて
いた状態で、その人は嬉しかったのかと思うと、
個人的にはどうかなって思ってしまいます。
私はやっぱこの「恋人」の行動は、
主人公と同じく許せないだろうな、と感じました。

  • 弱気なサラリーマンが、ふとしたことがきっかけで確変して‥

サラリーマンが主人公の「SIDE:B」は、
現役サラリーマンの私にとっては、
現実に引き戻されるような作品が多かったですね(笑)
普段弱気だったサラリーマンが、事故で頭を打ったことにより、
それまでは心の奥底に隠していた部分が、
表に出てきてしまうようになった「大里さんの本音」とか。
私も、クソ上司を怒鳴ってやりたいと思った事が
何度となくありましたから、確変後の大里さんの行動は
胸が空く思いでしたね(笑)ここまでぶっちゃけてしまえば
スッキリしそうだな、と思いました。
確変といえば「デンチュウさん」となった
田中さんのストーリーも同じパターンでしたね。

  • 太宰治が好きな人には自殺願望が‥

あとは、速読を仕事とする本好きの会社員が壊れていく(^^;)
「失われた文字を求めて」、これを読むと、
やっぱ好きな事は仕事にしないで、
趣味のままで留めておいた方が良いのかな、と思ったりしました(^^;)
書評を書くために、仕事で本を読むとなると、
やっぱ内容に興味は持てないと思うので、
その結果読書がつまらなくなってしまいますからね‥
そして、太宰治研究のベテラン教授にまつわる
「桜桃忌の恋人」などがありました。
嘗てこの教授は女子学生と心中を図り、自分だけ助かってしまったものの、
桜桃忌(太宰の命日)が近くになると、
彼女の幽霊が出没する、という感じのストーリーですね。
太宰好きには自殺願望がある、というのも割と良く知られていますけど‥