「ビタミンF」(はてな年間100冊読書クラブ 4/100)

ビタミンF

ビタミンF

  • なるほど、重松清さんはこういう系統なんですね‥

実は重松清さんの本を読むのは、これが初めてになります。
「テーマの重い作品が多い」という噂があったので、
今までは少々敬遠していました‥(^^;)
しかし、この前知人に薦められたので、
この機会に手に取ってみることにしました。
今回読んだ「ビタミンF」は、三十代後半の家庭持ちの父親が
主人公の短編小説が数本詰まっている、という感じですね。
なるほど、テーマが重いというか、リアリティがありますね(^^;)
私はまだ主人公よりは年下ですし、まだ独身で家庭も(当然子供も‥笑)
持っていませんけど、それでも非常に生々しく感じました。
ちなみに、「ビタミンF」という栄養素は実際には存在しませんが、
「F」には「Family」や「Friend」などの意味を込めてあるそうです。
なるほど、短編小説に共通しているのテーマが
そういえば家族(家庭)なんですね。

  • でも子供の事を「はずれくじ」と感じてしまうのは‥

この中では「はずれくじ」という作品が印象的でした。
グレはじめのような行動を取り始めた息子に対して、
「自分の思い通りには育たなかった」というところから
「はずれくじ」だった、という親の心境は、
私にとっては子供の立場から少しショッキングでした。
私も両親にとっては「はずれくじ」だったのかな、と思ったりして‥
両親が期待していた学校や就職先には
行かなかった(行けなかった)ですから、
その時には両親も「はずれくじ」と感じたのかな、と。。。
私が親になったら、子供がそんな風に取らないような
態度をしていたいな、と思います。
子供に期待するのはある意味親の勝手ですからね。
それも、「自分の果たせなかった夢を子供に託して、塾などに通わせる」
というのは、一番酷いと個人的には思います。
まぁ最後で父と子が和解しているところが救いって感じですね。
この本で取り扱われているストーリーのように、
リアリティ性が感じられるお話では、
バッドエンドだと後味が悪すぎるという感じですから‥(^^;)

  • 子供がいじめにあっても‥

また「セッちゃん」という作品は、いじめにあった子供が、
自分の立場を守るために、「セッちゃん」という架空の人物を作り上げて、
両親に学校の話をする(実際にいじめに遭っているのは自分だけど、
「セッちゃん」がいじめに遭っている、という設定にする)
って感じのストーリーですね。子供は家ではいじめを隠し続け、
両親は子供が隠していることに気づきつつも、
子供が泣き言を言い出さないので、子供のために何も出来ない‥
なるほどこういうジレンマも、親は抱えることがありますよね。
いかにも実際にありそうな話って感じです。
前の「はずれくじ」といい、子供を育てるということは
大変なことなんだなぁ、と改めて実感しました(^^;)
これではなるほど少子化が進むのも無理はないなぁ、という感じですね(苦笑)

  • 夫婦生活にも倦怠感が出た時に‥

もう一つ印象に残ったのは、未来の自分にあてて手紙を贈る
「未来ポスト」をテーマにした「なぎさホテルにて」ですね。
主人公は当時泊まりに来た彼女とは別れて、
現在は別の女性と結婚しているのですが、
最近妻とは倦怠気味なこともあって、
「なぎさホテル」から届いた手紙を機に、
(元カノとの思い出があるホテルに)
家族で泊まりに出かけてしまいます。
妻のほうも夫の変化を察して気まずい状況の中で、
期待していた(笑)元彼女との再会はかなわなかったものの、
元彼女の残してあった手紙から
逆に元気付けられて‥という感じの展開でした。
もう未練が無いとはいえ、こうしてふとしたきっかけで
元カノの事を思い出す、ということはありますよね。
「あのまま彼女とずっと付き合っていたら、
今はどうなっているんだろうか」とか想像したりして‥