「ローマから日本が見える」(はてな年間100冊読書クラブ 84/50)

ローマから日本が見える

ローマから日本が見える

著者の塩野七生さんといえば、ライフワークになっている大作
ローマ人の物語」で御馴染みですけど、
この本はその「ローマ人の物語」の入門編って感じでしょうか。
ローマ帝国の魅力が、塩野さんが興味を惹かれている点を中心に
一冊の本でコンパクトに書かれているって感じですね。
ローマ人の物語」は個々のエピソードは興味深いのですが、
非常に分量が多いため、「ローマ帝国全体」を捉えようと思うと
ちょっと難しいものがあるかなって感じです。
そんな時にこの本を「まとめ」的な位置付けで使えそうですね。
ただ、本書に記載されているのは、ローマ帝国の全史ではなく、
カエサルの死後、アウグストゥスオクタヴィアヌス)による
帝政の確立までではありますけど‥

ローマ帝国が長続きした理由として
「敗者に寛容であったこと」があげられていますね。
帝国主義時代の植民地支配とは違い、
敗者にも順次ローマ人並みの権利を認めていたそうです。
そうすることによって、敗者をローマに同化させて取り込み、
拡大していったという感じでしょうか。
また「独裁を嫌った」ことも特色の一つですね。
カエサルがブルータスらに殺されたのは有名ですが、
ポエニ戦争カルタゴの名将ハンニバルと戦い、
勝利の立役者となったスキピオでさえも、最後は糾弾され、
自殺せざるを得なくなったりしたそうです。
上記のようなローマ帝国の特徴について、
同世代のアテネやスパルタと対比したりして、
鮮やかに描かれていますね。