「郵貯崩壊―国が「民営化」を急ぐ本当の理由」(はてな年間100冊読書クラブ 56/50)

郵貯崩壊―国が「民営化」を急ぐ本当の理由

郵貯崩壊―国が「民営化」を急ぐ本当の理由

  • 民営化された郵貯が、不良金融機関の受け皿に?

この本は先日の猪瀬直樹氏の著書とは大きく毛色が違っており、
郵政民営化を「国家債務をウヤムヤにする政府の陰謀」
と断罪していますね。例えば、民営化した郵貯
りそな銀行や「あしぎん(足利銀行)」などの
国有化された不良金融機関と合併させて、
不良金融機関の債務を帳消しにする」といった、
驚愕のシナリオが説明されています。
郵貯は預金規模こそ大きいものの(個人金融資産の1/4)、
今までは国債財政投融資などに意識もせずに運用していたため、
自主運用体制が脆弱だそうですね。
民営化が成功した「ドイツ・ポスト」あたりとは違い、
今のままで郵貯を民営化しても苦戦必至だそうです。
また、郵貯を破綻させて、郵貯からの借金(国債など)を
帳消しにしようとしている悪巧みもあるそうですね。
民営の金融機関なら、「1千万円までは保証」のペイオフ制度が
運用中ですが、今郵貯が民営化されても、
既に規模の大きすぎる郵貯は、預金保険機構への加入が
認められない可能性もあるそうです。
そうすれば、ペイオフに関係なく
全額踏み倒しも可能ですからねぇ‥(^^;)

  • 景気回復が国家破綻に繋がる?

また、日本にとって良いはずの「景気回復」が、
逆に国家の破綻に繋がる、という説明もあります。
景気が回復すると、株や融資などに積極的に
投資されるようになるため、国債の価格が下落し、
国債漬け状態になっている日本自体が破綻してしまうそうですね。
「借金王」を自称したという故・小渕恵三首相時代に
大量発行された国債の償還が2008年に控えており、
もちろんまだまだ日本の財政は豊かではありませんから、
国債の償還は国債の発行で賄うより他はありません。
しかし、上記のように景気が回復して、
国債の引き受け先が無くなってしまったら、
立ちゆかなくなってしまうそうですね‥
なるほど、そう考えれば、2008年までは
金利の大きな上昇は無さそうとも言えるかな‥

  • 面白い視点からの本だったと思います

郵政民営化」の是非を問うた感のある先月の総選挙で
自民党が圧勝、「郵政民営化」翼賛一色の感がある中で、
この本は、少し変わった視点(政府の陰謀等)から
郵政民営化を捉えており、面白かったと思います。
果たして小泉純一郎首相の説く「民営化はバラ色」が真実なのか、
この本の説く内容が真実なのか、私にはまだ解りませんが‥(^^;)