「経営不在」(はてな年間100冊読書クラブ 38/50)

経営不在―カネボウの迷走と解体

経営不在―カネボウの迷走と解体

昨年、産業再生機構の傘下に入って再建を目指している
カネボウの企業史を扱った本です。
ちょうど今日、カネボウの監査をしていた会計士が
逮捕されたというニュースもありましたから、
イムリーって感じもしますね(^^;)
この本はもとは日本経済新聞の連載記事ですが、
加筆修正が施されているようですね。
一企業の栄光、そして後の衰退を描いた様子は、
企業で働くサラリーマンにとっては、
読んでいて切なくなる部分もありますね。
カネボウの衰退の一因である「稼ぎ頭である化粧品の利益に頼って、
創業の繊維事業から撤退に踏み切れなかった」という姿勢は、
私の働いている会社にも通じるものがあったため、
余計にそう思うのかもしれません‥(^^;)

  • 「栄光期」は経営は機能していたものの‥

「栄光の時期」は、個性的な経営者(伊藤山治・伊藤淳二氏など)の下で
繊維事業の規模を拡大し、更なる企業伸張を求めて、
食品や化粧品など多角化経営を目指していた時期が該当します。
この時期はタイトルの「経営不在」という状況ではありませんね。
後に化粧品事業は経営の柱となりますし。
ただ、将来の経営危機の元となった
多角化」の種が蒔かれた時期でもありますが‥

  • 繊維事業の衰退に対応出来ず‥

その後、日本国内の事業変化や海外からの輸入攻勢により、
繊維事業は衰退への道をたどります。
繊維にも合成繊維や天然繊維など色々あるようですが、
カネボウは「総合繊維」という看板にこだわり、
全ての繊維部門に進出し、決して撤退しようとしなかったそうですね。
繊維事業そのものが衰退していく中で、
更にラインナップを揃えることにこだわっていれば、
これは赤字が拡大するのは自明の事実ですな。

  • 経営陣はその場凌ぎの策しか取らず

しかし、カネボウ経営陣は、日産自動車のゴーン社長のような
荒療治の経営改革を図らず、
資産の切り売りや土地の時価評価による益出しなど、
あらゆる「その場凌ぎの手段」を選択して利益の捻出を図ります。
そして手段が無くなると遂に「粉飾決算」に走ってしまった、
という感じです‥このあたりは「経営不在」というに
相応しい状況ですね。借金が拡大し、
メインバンクの三井住友銀行から役員が派遣されますが、
銀行から派遣された役員とカネボウ生え抜きの役員との対立などもあり、
経営機能(役員会)が機能していなかったようですね。
「銀行は見捨てずになんとかしてくれる」といったような、
経営陣の楽観的過ぎる態度も印象に残りました。