「日本型うつ病社会」の構造―心理学者から見た停滞する日本の現状と未来」」(はてな年間100冊読書クラブ 26/50)

  • 「日本」という国家に対する心理学

加藤諦三先生といえば、自身の経験を通じて、
「押し付けがましい親によって子供がスポイルされる」
という内容の本を何冊も書かれています。
私もうつ病になっていた大学生時代に、
たまたま先生の本を手にとって読んだところ、
自分と見事なまでに重なる箇所が多く、それ以降先生の本を
むさぼるように読んで、だいぶ気が楽になった記憶があります。
そんな加藤先生の本を、今回久しぶりに読んでみました。
この本は対人心理学ではなく、日本という国家に対する
心理分析の本って感じですね。
加藤先生の今までの著書とは少し毛色が違うかなって感じです。

  • 日本人は日本人、何もかもアメリカの真似は危険

景気が低迷気味の日本、政府は「景気を回復させよう」と
色々な政策を打ち上げています。例えば、景気の回復策として、
アメリカで成功している「年功序列の廃止、能力主義」を
取り入れたりしています。しかし、変化を嫌う農耕民族・執着性格の
日本人にとっては、年功序列制度こそ適した制度であり、
アメリカ人とは気質も違うため、アメリカの真似をしても
成功する(&日本人が幸せになる)とは限らない、
と先生は説いています。

  • 戦後、経済は成長したものの‥

戦後、日本は高度経済を果たし、確かに経済指標的には
豊かになりましたが、心理的には逆に不幸になった、としています。
このあたりを、各種アンケート(「幸せだと思うか?」等)の
数値の各国比較から見事に抉り出していますね。
日本人の子供は、未来に希望を持っている割合が低いそうです。
企業内におけるうつ病などの精神病患者の増加等、
日本政府がこのまま引き続き経済成長を指向していけば、
日本人の心が壊れてしまう、と先生は警告しています。
「心理学を織り交ぜた、経済学」って感じの内容ですね。
個人的には今までに例を見ない視点から
書かれた本だと思いますので、
是非経済を論ずる経済学者あたりに読んで欲しいものだと思います。