[はてな100冊] 「お寺の経済学」(はてな100冊読書クラブ 16/50)

お寺の経済学

お寺の経済学

著者の中島隆信さんは、宗教学者とかどこかの宗派の住職ではなく、
慶應義塾大学商学部の教授だそうです。そのため、
例えば「お葬式の謝礼の相場はいくら?」といった
実際のお寺運営の生々しい話が中心ではなく、
経済学的な視点を元にして、
現在のお寺が抱える問題点を洗い出していますね。
読み物的にはなかなか面白い作品でした。
「全国にコンビニは4万軒あるが、お寺はなんと7万5千軒ある」
というトリビア的ネタを使った出だしは見事ですね、
「へぇ〜お寺ってそんなに多いんだ!」って感じで、
この本を読み進めたくなる気分になりますな。

  • 「葬式仏教」になってしまった背景

江戸幕府の支配体系に組み込まれたお寺は、
「檀家制度」によって反映しますが、明治時代の廃仏毀釈及び、
現代まで続く一般家庭の「檀家離れ」によって、
檀家精度は弱体化し続けており、最近では「葬式仏教」などとも
言われてしまっていますね。その「葬式仏教」も、
今や民間の葬儀社の成長によって脅かされてしまっている、
という状況になっています‥

  • お寺・宗教法人の経済学

また、各宗派の本山が、その布教などの宗教活動を続けるためには、
参加の末寺からの「上納金」に頼らざるを得ず、
また末寺も裕福なわけではありませんから、
その「上納金」を檀家・信者からの寄付・お布施に頼る‥
といった、「お寺・宗教法人の経済学」が描かれています。
また、「ペットの供養は営利事業なのか?」という判決を通じて、
「宗教法人は非課税」、という税法上の優位点の
不透明さなども解説されていますね。
「お寺が運営されている仕組み」というのは、
我々一般庶民は普段は知る機会が無いですから、
意外な点もあったりして、興味深く面白かったですね。